来年は「企業の努力が報われる年」を期待 忙しいのに実り(利益)少ない 埼玉経済ウォッチ
令和6年も数日を残すのみ。今年は大手企業を中心に企業業績が底堅く推移し、日本経済は堅調に推移したと言えそうだが、最低賃金の上昇をはじめ、経済界の賃上げ機運の高まりや円安なども背景にさまざまなモノの価格が上がった。価格転嫁ができなかった企業は息切れし、倒産件数は増加が続いており、今年の全国倒産件数は11年ぶりに1万件を超える可能性があり、中小企業にとっては厳しい1年になったのかもしれない。 ■業界内の倒産増える 来年はどのような1年になるのか。埼玉県内企業に来年の見通しについて聞いた。自社の業界の倒産動向について、「倒産件数が増える」と回答した企業が69・1%(178社のうち123社)で、約7割が増えると予想した。「今年と変わらない」との回答が28・1%(50社)と、倒産件数は高水準が続くとの予想が大半を占めた。 また、来年1年間の自社の売上高と利益の見通しについては、「売上も利益も横ばい」と予想した企業が22・2%(207社のうち46社)と最も多く、次いで「増収・増益」を予想した企業が21・3%(207社のうち44社)と続き、今年以上の業績を見通す企業が多かった。 「増収予想」が42・5%(88社)、「減収予想」が22・7%(47社)と売上伸長の見通しが4割を超えた一方、「増益予想」が28・5%(59社)に対し、「減益予想」が31・8%(66社)と利益は伸び悩むと予想した企業が多かった。景気拡大やインバウンド増に加え、物価高の中で価格転嫁が徐々に進み、売上は伸長を見込むが、コスト増すべての転嫁はできず、忙しいのに実り(利益)が少ない状況が続くとの慎重な姿勢が見受けられる。 ■大胆なチャレンジを 来年の干支は「巳(み)」となる。古い皮を捨て新しい皮を纏い脱皮を繰り返す蛇のように過去の戦略を練り直し、新たなアイデアを取り入れ、大胆なチャレンジができるかが問われる1年になりそうだ。令和7年は「乙巳(きのとみ)」で、これまでの努力や準備が実を結び始める時期ともいわれる。コロナ禍での業績悪化に耐え、その後の円安や物価高を乗り越えてきた企業の努力が報われる年になることが期待される。(佐々木博司・東京商工リサーチ埼玉支店長)