タネをまいたら、見たことのない植物が......?驚きの新種発見エピソード
『趣味の園芸』2024年1月号の特集内「春を運ぶ香り ジンチョウゲの仲間たち」では、三大香木の一つ、ジンチョウゲを楽しむコツを、倉重祐二さんに教えていただきました。 こぼれ話・前編では、誌面では語りきれなかったジンチョウゲへの思いや、斑入りの植物の魅力について伺いました。昨年、新潟県立植物園の園長を勇退し、現在は日本植物園協会の専務理事を務める倉重さん。後編では、倉重さんのキャリアについてお聞きしていきます。驚くような、新種発見の秘話も飛び出して...!? ――倉重さんが植物の道に進まれたきっかけは何でしょうか。 進路を決めたのは高校生のときですが、明確なきっかけがあったわけではないんですよね......。ただ、小学生や中学生のときには、自宅の近くにあった種苗会社の販売店で、よくタネを買って鉢で育てていました。テンナンショウやカンアオイが好きでしたね。イワタバコ科の植物も。大学でシャクナゲの研究をはじめるようになってからは、もっぱら木本植物に傾倒していました。 そういうなかで、思いがけないこともありました。キューガーデンの友人が台湾で採集したタネをもらって、栽培していたんです。ヤマツツジの仲間のタネだということだったんですが、育ててみると、どうも違うよな......と。そのまま育て、花を咲かせてみて、新種だと分かった、ということがありました。 1999年にチランシャネンセ(Rhododendron chilanshanense Kurashige)として記載しました。ヤマツツジの仲間ではなく、じつはミツバツツジの仲間だったんですよ。 ――ええと......!? 新種発見ということでしょうか。すごすぎて話が理解しきれていないのですが......。ヤマツツジだと聞いてタネをまいたけれど、育ってみると違って、まだ図鑑には載っていない未知の植物だとわかった、ということでしょうか。 はい。当時、イギリス人が、種子採集の探検で世界の国々を訪れていたんです。そのなかで台湾にも行ったんですね。その際にいろいろな植物のタネをとってきていて。それを分譲してもらったんです。 ヤマツツジの仲間と聞いて育てていたのに、完全に落葉するんですよ。ヤマツツジは半落葉で、冬でも丸坊主にはならないはず。変だなと思って調べまして。ミツバツツジとも葉が微妙に違って、オンツツジやジングウツツジに近い新種だとわかり、発表したんです。