「博多焼酎」第1次焼酎ブームでも鹿児島や宮崎県産より影薄かったが…山陽新幹線の全線開通で販路拡大
「福岡も酒どころ。すてきな蔵元がおいしい焼酎を造っています」 【写真】クロボー製菓の黒糖リーフパイ
昨年11月下旬、福岡市・天神の大丸福岡天神店で開かれたイベント。販売スタッフが来場者に「博多焼酎」を勧めていた。「こんなに銘柄があるとは知らなかった。福岡の焼酎を目当てに旅行するのもいいな」。試飲した千葉県の会社員男性(43)は笑顔を見せた。
「博多焼酎」は福岡県産の本格焼酎の総称だ。山陽新幹線全線開業(1975年)の2年後に発足した「博多焼酎組合」が、認知度のアップを目指して命名した。
「あの頃、福岡の焼酎は影が薄かった」。そう話すのは「ゑびす酒造」(朝倉市)会長の田中勝海さん(82)だ。当時は第1次焼酎ブーム。しかし、田中さんによると、人気があったのは、鹿児島や宮崎など他県産だった。鹿児島はイモ、熊本はコメなど原材料を全面に打ち出していたが、福岡の原料はコメや麦などさまざま。県産焼酎は目立たなかった。
このため、組合を構成する県内の蔵元9社は醸造技術を生かして、良質な県産麦を用いた本格焼酎を醸造。蔵元は筑後地域が中心だったが、県産焼酎の認知を深めようと、「博多焼酎」として売り出した。
山陽新幹線の開業前に30億円台だった県産焼酎の出荷額は開業後、40億円台にまで増加。筑前町の酒造会社「天盃」社長の多田格さん(59)は、「新幹線の開通で福岡のモノが以前よりも県外に伝わりやすくなった。主な取引先も新幹線の沿線で、開通を機に販路拡大の加速度は高まった」と話す。
「開業50年」受け新たな商品も登場
山陽新幹線の全線開業50年を受け、新たな土産品も登場している。山陽新幹線を運行するJR西日本などが、県内の事業者と共同企画したもので、博多、小倉両駅のほか、各事業者の直売店などで販売されている。
このうち、1920年創業の老舗で、黒砂糖を使った「黒棒」で知られる「クロボー製菓」(久留米市)は、人気商品「黒糖リーフパイ」を特別な仕様に包装して販売。職人が1個ずつ黒糖の蜜を手作業で塗って仕上げるため、大量生産ができず、これまでは久留米市内の直売店などでのみ取り扱っていた。