「なぜリスクのある人事をあえてやる必要があるのか」J1福岡の金明輝氏監督就任会見は異例の質疑殺到80分…反発した一部サポーターの理解は得られたのか?
J1のアビスパ福岡の新監督に就任したFC町田ゼルビアの前ヘッドコーチ、金明輝氏(43)が16日に福岡市内のクラブハウスで記者会見に臨んだ。福岡のサポーター団体から激しい反発を受けているサガン鳥栖監督時代の複数のパワーハラスメント行為をあらためて謝罪した金新監督への質問を、同席した川森敬史会長(59)が「釈明会見ではないので」と遮った場面を含め、多くの質疑があった会見は80分近くに及んだ。大騒動を巻き起こした今回の監督人事に対して、ファン・サポーターの理解は得られたのか。 【画像】最終決戦でJ連覇を決めたヴィッセル神戸のウイニングショット
黒色の上下スーツにクラブカラーのひとつのネイビーのネクタイ姿で、背筋を伸ばして登壇していた金新監督が一瞬だけ目頭をぬぐう場面があった。 スタートから30分がたとうとしていた段階。パワハラ歴のある金監督の起用は、福岡が謳う基本理念「子ども達に夢と感動を 地域に誇りと活力を」に反するのではないか、と問われた川森会長が、次のように答えた直後だった。 「私どもの基本理念は決して変わることはございません。今回も、当然これからもそれを軸に経営をさせていただきます。そのなかで金監督自身が過去をしっかりと反省し、努力を重ねてきております。過去の間違いを乗り越える過程もまた、子どもたちにとって大切な学びや刺激になると信じております。チームスポーツであるサッカーを通じて、チーム全体が新たなことに挑戦し、前進し続ける姿勢を子どもたちに見てもらい、何かを感じてもらうことも大事なことだと確信しております」 福岡のYouTube公式チャンネルで、急きょライブ配信された就任会見。新監督就任にいたった理由のひとつをかみしめながら、金監督も言葉を紡いだ。 「いろいろな見解があるのも重々承知しています。サッカーに対する情熱、強い責任と覚悟を持って取り組んできたなかで、勝利至上主義というか、勝つことへの執着が強すぎるあまり、自分を見失ってしまっていた部分も正直ありました。真摯に受け止めて、これからの言動でしっかりと信頼を少しずつ取り戻して築いていきたい」 福岡市内のクラブハウスで行われた会見には、柳田伸明チーム強化部長(54)も同席。福岡をJ1昇格および定着、クラブ史上の初タイトルとなる昨シーズンのYBCルヴァンカップ制覇に導いた長谷部茂利氏(53、川崎フロンターレ新監督)の後任として、金氏にオファーを出した経緯と理由が初めて説明された。 「前監督に5年間で攻守にアグレッシブなスタイルを築いていただいた。そのスタイルを継続し、さらに進化させる力があり、攻撃のオートマチズムを構築できて、選手の力を最大限に引き出すことができる監督だと思っています」 予算と戦力の限られた鳥栖を、2021シーズンに7位に導いた手腕があらためて強調された。柳田強化部長はさらに東京ヴェルディで「10番」を背負い、今シーズンのJ1リーグで37試合に出場したMF見木友哉(26)の移籍加入決定を引き合いに出しながら、金監督の存在がプラスになっているともつけ加えた。 「中心で活躍していた10番の選手が、福岡を新天地として選んでくれた。みんなが(金監督を)待ち遠しく感じている、ひとつの証明になったのではないかと思う」 しかし、会見で何度も指摘されたのは、金監督のパワハラ歴だった。