【毎日書評】ドン・キホーテ創業者が実践する「幸福の最大化」と「不運の最小化」
運のいい人は、運を使いきれる人
大きな成功を収めた経営者や事業家などが、マスコミのインタビューで成功の理由を問われた際、「いやー、運がよかったからですよ」などと答えている場面をしばしば目にします。 著者もたいていはそう答えているようですが、しかし自身を含め、本心では「運がよかったのは事実だが、その運を呼び寄せ、活かしきったのは自分の力だ」と思っているはずだとも明かしています。ストレートに本心を明かしてしまえば、いかにも偉そうで不遜なイメージを与えてしまうし、あらぬ誤解や嫉妬を招きかねないから、「運がよかった」と無難に答えているのだということ。 上記で触れたように、運のいい人とは「運を使いきれる人」であり、運の悪い人は「運を使い切れない人」か「使いこなせない人」。つまり、個々人に与えられる運に大差はないものの、その使い方によって人生の結果は大きく異なるということ。いいかえれば、成功した人たちは、運をうまく使いこなしたということなのでしょう。(50ページより)
運の総量をコントロールする秘訣
「禍福はあざなえる縄の如し」という故事成語が意味するように、不運と幸運は交互にやってくることが多いが、コインを投げた時の裏表のように、裏(不運)が何回も続いたり、表(幸運)ばかりが続くこともある。不運と幸運がどのような順序で出現するかを予測するのは困難だが、「大数の法則」を適用すれば、最終的にその確率は、誰しもほとんど半々に近づいてくるはずである。(51ページより) 多くのビジネスや産業においても応用されている大数の法則とは、統計学や確率論においてきわめて重要な基本法則のひとつ。といっても難しいものではなく、要は「サンプルの数が多ければ多いほど、その平均は母集団全体の平均に近づく」ということです。 たとえば著者のように多くの挑戦をしてきた創業経営者は、たくさんの幸運に恵まれる一方、それと同じくらいたくさんの不運に遭遇するもの。たしかにそのとおりかもしれませんが、だとすれば幸運と不運が巡ってきたとき、私たちはいかにしてそれに対峙すべきなのでしょうか? 結論から言えば、「幸運の最大化と不運の最小化」が最良の方策だろう。つまり、幸運が訪れた時はいかにその幸運を最大化するか、不運が訪れた時はいかにその不運を最小化するかが、運の総量をコントロールする秘訣である。(52ページより) ともすると人は不運なとき、なんとか自分の受けた損失をカバーしようと懸命にもがいてしまいがち。しかし下手に動いてしまうと、傷口はさらに広がるものでもあります。 だからこそ不運が訪れたときは、いかにそれを最小化するかということに意識を集中させなければならないということ。そのため著者は、不運なときは下手に動かず、自己抑制してなにもしないようにしているのだそうです。 そして、そうやって不運(ピンチ)をしのげば、そのあとに幸運(チャンス)が訪れるもの。経験した不運が大きければ大きいほど、訪れる幸運は不運に反比例して大きなものとなる可能性が高いといいます。(51ページより)