【毎日書評】ドン・キホーテ創業者が実践する「幸福の最大化」と「不運の最小化」
非常にインパクトの強いカバーデザインですが、『運 ドン・キホーテ創業者「最強の遺言」』(安田隆夫 著、文春新書)の著者は、かの有名なディスカウントストア「ドン・キホーテ」の創業者。注目すべきは、本書のテーマです。 運は私にとって永遠のテーマであり、その運について語るのを本業(事業経営)以外の最後のライフワークにしようと思っている。そういう意味で、本書『運』は、いわば私の“遺言”のようなものだ。 本書では、私が人生とビジネスをかけて学んだ運のすべてを披露するので、貪欲に吸収していただければ幸いである。それにより、読者の皆さんに少しでも勇気と希望、幸せを与えられるのなら望外の喜びであり、私が本業以外でできる、これ以上の社会貢献と恩返しはないと思っている。(2ページより) ご存じのとおりドン・キホーテ(現社名はパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)は大成功を収めているわけですが、ここでいう「運」とは単に「ツキがよかった」という類の話ではないのだとか。自身は特別に運が強いわけではなく、災難を招いた「不運」を、「幸運」に変える力が強いというのです。 私は、人によって運の総量そのものに大差はないと考えている。現実を見れば、明らかに運のいい人とそうでない人はいるだろう。しかし、それは与えられた運をどう使ったかという違いに過ぎない。すなわち、運のいい人とは「運を使い切れる人」であり、運の悪い人は「運を使い切れない人」あるいは「使いこなせない人」だと言える。(「はじめに」より) つまり、運は自分自身でコントロールできるものだということ。著者はこれを「幸福の最大化と不運の最小化」と呼んでいるそうです。人生には幸運と不運が交互に訪れるもので、不運が訪れた際にはそれをいかに最小化するか、幸運が訪れたときにはいかに最大化するかが問われるということ。 そうした考え方に基づく本書のなかから、その点に焦点を当てた第二章「幸運の最大化と不運の最小化」に注目してみることにしましょう。