「走っても掛け値なしに世界最速級SUVの1台」 モータージャーナリストの佐野弘宗がBMW XMほか5台の注目輸入車に試乗!
外車のカオスを楽しもう!
モータージャーナリストの佐野弘宗さんがエンジン大試乗会で試乗した5台のガイ車がこれ! アルファ・ロメオ・トナーレ、アウディQ8スポーツバック 55eトロン、BMW XM、シボレー・コルベット 、フェラーリ296GTSに乗った本音とは? 【写真24枚】モータージャーナリストの佐野弘宗さんがエンジン大試乗会で乗った5台の注目輸入車の写真を見る ◆理屈抜きに元気が出る 毎年思うことですが、こうしてフェラーリとランボ、マクラーレン、ロールス、ベントレー、ポルシェ……がならんでいるだけで、理屈抜きに元気が出ます。参加いただいていたEPC会員の皆さんも、それはまったく同じとお見受けしました。加えてドイツ御三家にキャデラック、ジープなどの欧米勢、ヒョンデやBYDというアジア勢と、その他のブランドも数年前以上に百花繚乱。さらに純エンジンからマイルド・ハイブリッド、フル・ハイブリッド、プラグイン・ハイブリッド、そして純電気自動車(BEV)と、パワートレインも百花繚乱……というか、ちょっとしたカオス。最近は欧州でもBEV完全移行は思ったより時間がかかる?……みたいな雰囲気になっていて、あらゆるパワートレインが混在する状態は意外と長く続くかもしれません。メーカーは大変でしょうけど、われわれクルマ好きは、今のカオスを元気に楽しみましょう。 ◆アルファ・ロメオ・トナーレ プラグイン・ハイブリッドQ4ヴェローチェ「まったく迷いがない」 トナーレはグループ内のフィアット500X、ジープのレネゲードやコンパスとアーキテクチャーを共有するアルファ・ロメオだ。つまりはFFベースのコンパクトSUV。ステルヴィオとジュリアが出て、てっきりFRレイアウト専用の上級ブランドに移行すると思いきや……の迷走感はちょっとある。実際、この伝統のスポーティ・ブランドの売り方には、葛藤や迷いも多かろう。ただ、どんなアーキテクチャーでも、デザインや乗り味にはまったく迷いがないのが、アルファの強みでもある。誤解を恐れずにいえば、外観なら例の盾グリルと5ホールデザインホイール、内装なら独立2眼風メーターがあれば、アルファに見える。こうしたお約束が通用するのは、長い伝統を積み重ねてきたゆえの強みだ。走りでいえば、手首のスナップひとつで向きを変える、元気印の超クイック・ステアリングが最新アルファのお約束。昭和オヤジ的にいえば、いやいや伝統のアルファのコーナリングは、もっと滋味深くてじんわりしたもの……といいたくなったりもするが、時代に合わせて変わっていくのも、また伝統ということか。 ◆アウディQ8スポーツバック 55eトロン・クワトロSライン「エンジンから解放されたクワトロ」 アウディといえばクワトロ。道なき道をゆっくりと分け入るためだった4WDを、センターデフ付きフルタイム方式として、フラットダートや舗装路を速く安定して走るために初めて使ったのが1980年のアウディだった。つまりスポーツ4WDの元祖だ。このQ8 e-tronはそんなアウディの近未来をリードする旗艦BEVなので、ご想像のとおり4WDである。ただ、BEVなので前後に独立してモーターを置いており、前後に機械的なつながりはない。車重2.6t以上のスーパーヘビー級だが、しかるべき場所で走らせるとありえないくらいのコーナリングスピードを発揮する。けっこう積極的なトルク配分をしているのか、アクセルを踏むほど、元気に笑ってしまうくらいグイグイ曲がる。しかも路面に吸いつく安心感はそのまま。そういえば、アウディのエンジン車は戦後から一貫してFFレイアウトであり、クワトロもFFベースらしく、基本的には安定志向だった。そんなエンジン車の呪縛から解放されたクワトロを味わうと、アウディはずっと前からこういうことをやりたかったのだろうな……と思う。 ◆BMW XM「令和の最新トレンド」 XMを目の前にすると、絶対に素通りできない。賛であれ、否であれ、だれもがひとこと言わずには立ち去れない。ひと目見た瞬間から、議論が伯仲する。この時点で、BMWがXMのデザインで目指したところは、あらかた達成されたといえるのではないか。 目の前にしたXMで最初に目につくのは、もちろん垂直にそびえる巨大八角形キドニー・グリルだが、もう1つ目が離せなくなるのは、各部の艶消しマット・ゴールド加飾だ。ちなみに、ここをすべてグロス・ブラックにすることもできるという。クルマにゴールド・メッキと聞くと「昭和の成金趣味」を想起する(私を含む)中高年もおられようが、じつはマット・ゴールドとグロス・ブラックのアクセサリーは昭和どころか、令和の最新トレンドらしい。 インテリアはエクステリアほど胸騒ぎはしないけれど、試乗車にあしらわれる使い古された風のコーヒー色ビンテージ・レザーには、中高年オヤジも思わずニヤリとさせられる。XMはもちろん走っても掛け値なしに世界最速級SUVの1台だが、走り出す前から、こうしてしたり顔で語りまくる元気をくれる。 ◆シボレー・コルベット「フレンドリーなオーラ」 今の日本市場では生粋のスポーツ・ブランドで押しているシボレーだが、米本国での本来の姿は、民衆的なポピュラー・ブランドである。だから、1420~1800万円という価格も絶対的に安くはないけれど、きょうびのスーパーカーとしては爆安というほかない。シボレーならではのフレンドリーさは価格だけなく、デザインや使い勝手、乗り心地にも一貫する。内外デザインは一見ギミックっぽいところも多いが、実際には車両感覚はバツグンだし、コクピットまわりの人間工学も考えぬかれている。センターコンソールに縦一列のスイッチは確かに使いやすくはないが、ここにあるのは頻繁に触る必要がない空調関係のみ。ドライビング関連の機能はすべて、運転席からピタリと手の届くところに集中しているのだ。乗り心地もしかり。運動性能は完全に超一流スポーツカーなのに、乗り心地はすこぶる優しい。コルベットで走っているときに浴びせられる周囲の視線も、欧州スーパーカーでありがちな畏怖系より、もっと屈託がない気がする。この素直に元気をくれる明るいオーラは、コルベットならではだ。 ◆フェラーリ296GTS「V6でもフェラーリ」 最新のフェラーリ・ミドシップはV6エンジン……と聞いて、条件反射的に「かつてフェラーリを名乗れるのは12気筒だけだった。しかもV6といえば、ディーノだろ?」とツッコミを入れてしまうのは、スーパーカー・ブームの洗礼を受けた50代オヤジの性(さが)である。とはいえ、この296GTB/GTSがフェラーリ製市販車としては1974年までつくれらたディーノ246GT以来のV6であることは事実だ。もっとも、その3リッター V6ターボにはモーターが組み合わせられている。830psというプラグイン・ハイブリッドのシステム出力は、前身となったF8トリブートの3.9L V8ツインターボの720psを大きくしのぐ。それゆえ、アクセルひと踏みで背中を蹴っ飛ばされたかのようにアドレナリン出まくり……なのはもちろん、乗っている人間を元気にさせるのは、その音だ。どこをどういう演出をしているのかは分からないが、中速域までは適度なツブツブ感を残しつつ、そこからはすべてが溶け合うように8500rpmまで高まっていく。ハイブリッドで8500rpmて。V6でもフェラーリはフェラーリですね。 文=佐野 弘宗 (ENGINE2024年4月号)
ENGINE編集部
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