世界自然遺産、小笠原諸島の固有生物を食い尽くすグリーンアノールとは?
外来トカゲ、前例のない駆除方法に四苦八苦
そうした状況の中、今、もっとも島の研究者を悩ませている外来生物がグリーンアノールという外来トカゲです。北米原産で、1960年代に小笠原の父島にペット目的で持ち込まれたものが、野生化したと考えられ、今では人が住んでいる父島と母島の島中に分布しています。 きれいな緑色の体とつぶらな瞳をもち、見た目はとても愛らしいトカゲで、知らない人が見れば、南の島のイメージにぴったりの固有種だと思ってしまうかも知れません。しかし、その愛らしい姿とは裏腹に、樹木の幹や枝の上を器用に走り回り、島中の固有の昆虫をバクバク食べまくって、その個体数を急速に減らしていることが近年の調査で分かったのです。 現在、このトカゲは環境省・外来生物法の規制対象種である特定外来生物にも指定されており、島の外にこのトカゲを持ち出すことは厳禁となっています(もし「意図的に」違反して持ち出せば300万円の罰金が科せられる)。グリーンアノールも島の生物多様性保全のために、現在、駆除が進められており、小笠原諸島が世界自然遺産に登録される際にも、ユネスコからこの外来トカゲのコントロールが遺産登録の条件とされています。 そもそも、これまでにもトカゲを駆除するなんて研究例は世界にもほとんど例がなく、おまけにこのトカゲは地上も木の上も自由自在に走り回れ、簡単に捕獲できる動物ではありません。そこで開発されたのが、ゴキブリホイホイを応用した「アノールホイホイ」。強力な粘着シートをもつトラップを木の幹にまいておくことで、アノールが獲物を採りに木登りして来た所を捕まえるという、ある意味原始的な手法です。 しかし、このアノールホイホイと保護柵を組み合わせた方法で地元の方々の精力的に駆除を続けたおかげで、父島・母島では、部分的ではありますが、以前よりもアノールの数を抑えることができました。さらにアノールが減ったエリアでは、固有の昆虫が増えてきていることも明らかとなっています。ただ、問題なのは、アノールの数が減ってくれば、わなの効果が落ちるので、根絶のためにはいっそうの労力が求められるということになります。駆除活動の予算にも人員にも限りがあり、いかに効率よくアノールを駆除するか、新しい手法の開発が必要とされます。