名古屋・長谷川監督、ルヴァン杯VでJリーグ単独最多3クラブでタイトル「素晴らしい選手たちに助けてもらいました」
◆YBCルヴァン杯▽決勝 名古屋3―3(PK5―4)新潟(2日・国立) J1名古屋が3大会ぶり2度目の優勝を果たし、国内3大タイトルの1つを獲得した。新潟との熱戦で120分間の末、3―3で迎えたPK戦を5―4で制した。長谷川健太監督(59)は、Jリーグの監督で初めて異なる3クラブでタイトルを獲得し、ルヴァン杯も3度目の制覇となった。優勝賞金は1億5000万円。新潟は奮闘及ばず、クラブ初のタイトル獲得を逃した。会場には大会史上最多の6万2517人が詰めかけた。 優勝メダルを首から下げた名古屋の選手たちが、カップを代わる代わる空に掲げた。表彰台で跳びはね、はしゃぎ、歌い、叫んだ。その様子を、長谷川監督は遠くから温かい目で見つめていた。「素晴らしい選手たちに助けてもらいました」。ルヴァン杯制覇はG大阪、FC東京時代に続いて3度目。異なる3クラブでの3大タイトル獲得も、史上初の快挙となった。 選手を、自らを信じた。日本代表の森保一監督(56)が「(大会)史上最高の試合」と驚嘆した激闘は、FC東京時代からの教え子・永井の激走から始まった。前半31分、新潟のパスミスをダイレクトで流し込んだ。新潟の「パスワーク」に、自身の指導指針の代名詞「ハードワーク」で対抗して先制点を奪った。 勝利目前の後半アディショナルタイム(AT)11分、途中投入した中山のファウルで与えたPKで同点弾を献上した。交代策は裏目に出た。指揮官は「全く(勝負勘が)ないです」と頭をかいたが、その中山が延長前半に一時勝ち越しのゴールを挙げるのだから、永井も「(運を)もってる人ですよね」とニヤリと笑う。 PK戦では、指名した5人全員が成功。GKランゲラックを2番手で起用し、「決してPKがうまい選手ではないが、山岸で外したら仕方ない」と、福岡時代の前回大会決勝で失敗した山岸を開始直前に7番手から5番目に繰り上げた。優勝請負人の勝負手が、チームを頂点に導いた。 今大会に懸けてきた。通常、カップ戦はリーグ戦より優先度や注目度が下がる。しかし、リーグで中位(9位)に甘んじる現状を受けて方針を変えた。「リーグ戦は調整起用になった。本当はあっちゃいけないことだけど」。タイトルの重みを知っているからこそ、ルヴァン杯を全力で取りにいくことが最善だと判断した。クラブ、選手の価値を、見事にタイトルで示してみせた。 「全ての選手、サポーター、クラブ関係者に感謝です」と指揮官。21年大会V時はコロナ禍で入場制限があり、観客は声を出して喜ぶこともかなわなかった。ついに訪れた歓喜の瞬間。名古屋サポーターの大合唱は表彰式が終わってもなお、国立競技場に響き続けた。(岡島 智哉) ◆名古屋グランパス 1991年創設。93年のJリーグ開幕時から加盟する「オリジナル10」の一つ。トヨタ自動車工業サッカー部が母体。リーグ優勝1回、ルヴァン杯優勝2回、天皇杯優勝2回。主なOBは元日本代表GK楢崎正剛氏(99~18年)、同MF本田圭佑(05~07年)、同DF吉田麻也(07~09年)、元ユーゴスラビア代表MFストイコビッチ(94~01年)ら。本拠地は愛知・豊田市の豊田スタジアム。
報知新聞社