プロ野球FA戦線、前代未聞の"様子見合戦"はなぜ起きた? 主砲も正捕手もみんなそろって「熟考! 熟考!! 熟考!!!」
今年は"虎の主砲"や"世界一の捕手"、"育成の星"など、ギリギリまで熟考する選手が例年以上に多かったが、いったいどのような思惑があったのか? プロ野球界にいま新しい風が吹き始めている!(*成績、年齢は11月12日時点) 【写真】プロ野球FA戦線、注目の選手たち ■"世界一の捕手"甲斐がFA宣言 今年のFA戦線は、甲斐拓也(ソフトバンク)、大城卓三(巨人)、坂本誠志郎(阪神)、木下拓哉(中日)らに加え、海外FA権を持ち越している梅野隆太郎(阪神)、中村悠平(ヤクルト)らの動向について、「捕手シャッフルはあるのか」と注目が集まった。 その中で木下がいち早くFA宣言したものの、ほかの選手は態度を保留し、期限ギリギリまで熟考する姿が目立った。この要因について、本誌おなじみの野球評論家、お股ニキ氏が解説する。 「甲斐が移籍するならソフトバンクは坂本が欲しいだろうし、坂本がソフトバンクに行くなら阪神も甲斐を狙いたいだろうし、甲斐が巨人有力なら大城はどうするのか......と一気に"玉突き大移動"が起こりえる状況でした。 それだけに選手も球団もギリギリまで情報収集に努めた結果、例年以上に熟考する選手が多かったのでしょう。残留するにしても、結論を引っ張ることでうまく交渉を進めたいという思惑があったのでは」 そもそも、チームの頭脳である主戦捕手の移籍は影響が大きい。昨季開幕前に森友哉が西武からオリックスへ移籍したが、今季は捕手での出場が50試合のみと限定的。DHや外野手起用が多く、"打者"として見込まれていたともいえる。 「2番手捕手の移籍例はよくありますが、正捕手のFA移籍となると、2001年オフに横浜から中日へ移籍した谷繁元信さん、2010年オフに西武からソフトバンクへ移籍した細川亨さんが思い起こされます。 いずれも旧所属球団は翌年に順位を落としました。今回、ソフトバンクの正捕手である甲斐がFA宣言しましたが、正捕手の移籍がアンタッチャブルではなくなったという点で、日本球界が変わってきた象徴的事例だと思います」 甲斐は侍ジャパンの正捕手として東京五輪やWBCを制覇。そんな"世界一の捕手"から飛び出したFA宣言が与えるインパクトは大きい。 「九州出身で育成から育ててもらった恩があり、ホークスのレジェンドである野村克也さんがつけていた背番号19を継承し、年俸も2億円超え。 これまでの感覚であれば、このまま地元球団ひと筋で現役を全うする以外に選択肢がありませんでした。ただ、今季の甲斐は配球もフレーミングも打撃もひと皮むけ、ほかのチームで自分を試したいという気持ちが強まったのかもしれません」