なぜ柔道伝統の100キロ超級で原沢は勝てなかったのか?井上康生監督も危機感抱く
柔道の世界選手権の個人戦最終日が31日、東京・九段下の日本武道館で行われ、男子100キロ超級でリオ五輪銀の原沢久喜(27、百五銀行)が決勝でリオ五輪100キロ級金のルカシュ・クルパレク(28、チェコ)に延長戦の末に敗れ、16年ぶりの金メダル獲得はならなかった。東京五輪での伝統の最重量級の復活に井上康生監督は、「厳しい戦いが待っている」と危機感を訴えた。
またしても日本柔道界の悲願はならなかった。 決勝戦は、両者の指導の数が2対2の互角のままゴールデンスコアの延長戦へもつれ込んだ。直後、原沢が大内刈りを仕掛けた。だが、裏投げで返され、原沢はなんとか体を変えて顔面から畳に落ちた。技ありは取られなかったが、原沢は、立ち上がるとき、一瞬ふらっと体が傾いて手をついた。試合後、「影響はなかった」と言い訳をしなかったが、目はうつろ。「ちょっと目とか視界はおかしくなった」という。 明らかに動きが落ちた。原沢は、気力を振り絞って、得意の内股を仕掛けるが、クルパレクは、ねじこまれた足を挟んで殺し耐え忍ぶ。「相手が勝負にきたらこっちもいってやる」。原沢は、チャンスを狙っていたが、スタミナ切れも顕著だった。4分を前に試合が持久戦になろうとしたときだった。背中から帯を持たれ投げを打たれたとき、原沢は、亀の体勢になった。これが消極的姿勢と判断され、反則負けとなる3つ目の指導が入った。 原沢は両手を膝にやり無表情で下を向いた。 クルパレクは畳に両膝を着き両手を広げ喜びを表現した。 「金メダルを狙いにいった。いい形で来年の五輪につなげたかった。今は率直に悔しい」 顔を傷だらけにした原沢は、そう言って唇をかんだ。 「組み手の序盤は良かった。でも、そこから自分が何をしたいのか、どう展開していくのか、を具体的に考えられなくて、どんどん相手のペースになっていってスタミナが削られていった」 何度か釣り手で奥襟をつかみ、原沢の組み手で持てる時間はあった。だが、原沢自身が反省するように、そこから先の決定打に欠けた。勝負に行けなかったのである。