米銀破綻も金融システム全体は揺らがず 次回5月FOMCで利上げ終了か
パウエル議長「利上げ停止の可能性も議論した」
注目の政策金利見通し(いわゆるドットチャート、3カ月に1度更新される政策委員の金利見通し)は、2023年末の中央値が5.25%(誘導目標レンジ上限)で前回から不変でした。ここから判断すると、今回の局面での利上げは次回5月FOMCにおける0.25のポイント利上げを以って終了する可能性が最も高いと考えられます。むろん、新たな金融不安が台頭すれば利上げ停止の可能性は高まりますが、これまでのところ金融システム全体が揺らぐには至っておらず、この状態が維持されるのであれば追加利上げが正当化されるでしょう。 ドットチャートについて、2024年末は利下げが示唆されたものの、中央値は前回対比で小幅に切り上がり4.375%とされました。1回を0.25ポイントとすれば3.5回分相当の利下げ計画が示された形です。次いで2025年末の中央値は3.25%となり、2024年末対比4.5回分の利下げ計画が示されました。ただし、2024年以降の数値はインフレと金融不安の混在によって不透明感が高まっている現状、参考値程度の扱いに過ぎない感はあります。 記者会見でパウエル議長は、最近の金融不安の高まりを受けて「利上げ停止の可能性も議論した上で、今回の決定に至った」として、利上げ休止を検討していたことを認めました。また最近の金融不安が、銀行の貸出態度厳格化など金融引き締め的な金融環境を作り出すことを通じて、利上げと同等、あるいはそれ以上の効果をもたらすとも指摘しました。一方で現在の想定通りに経済・物価情勢が進展するなら「年内の利下げは想定しない」とする姿勢は維持しました。
米銀の経営不安の動揺の広がりには警戒必要
今回のFOMCを総括すると、事前予想対比でややハト派(金融緩和的)な印象でした。インフレ退治を継続する揺るぎない姿勢が維持されたとはいえ、金融不安に直面してやや慎重な姿勢が示されたことで、利上げ終了が間近に迫っていることが感じ取れました。 これを受けて米債イールドカーブは短い年限を中心に大幅な金利低下で反応しました。株式が下落したのは、時同じくしてイエレン財務長官が「現在の1口座当たり25万ドルという預金保険の上限引き上げは検討していない」などと述べ、銀行破綻に際して一方的な救済措置に距離を置く姿勢を示したことが効いた形です。 当面の金融市場は、比較的小規模な米銀の経営不安が取り沙汰され、その動揺が広がることに警戒が必要でしょう。また市況悪化の著しいオフィス関連不動産に投融資をしてきた主体(事業会社、ファンド、金融機関)の損失にも注意したいところです。
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