0.03秒差の明暗…“史上最高レベル”日本選手権でハードル女王・福部真子(28歳)と2位・田中佑美(25歳)が語った「ライバルたちとの絆」
陸上・日本選手権の女子100mハードル。雨が降りしきるなか、13秒の戦いを終えた3人のハードラーが抱き合って健闘を称え合う場面があった。 【写真】「えっ、何頭身なの…?みんな足なっがい…」“165cmのハードル女王”福部真子(28歳)と寺田明日香(34歳)、田中佑美(25歳)の長~い手足とバキバキの腹筋。大接戦の決勝レースも…この記事の写真を見る(50枚超) 近年活況のこの種目。昨年もまた、4人が12秒台をマークする激戦だったが、今回は予選から大会記録の応酬となり、史上最もハイレベルな日本選手権となった。 この戦いを制したのは日本記録保持者の福部真子(日本建設工業)。 準決勝でパリ五輪の参加標準記録(12秒77)を突破する12秒75をマークしており、内定基準を満たしてパリ行きの切符を手にした。 「調子は良いんですけど、標準を突破した上で決勝を迎えるのが2回目で、昨日の夜はまた同じ“失敗”をしちゃったらどうしようと考えちゃって、寝られなかったです」 福部が口にした“失敗”とは、昨年の日本選手権の決勝にあった。
ブダペスト世陸選考での「苦い記憶」
昨年のブダペスト世界選手権の参加標準記録をすでに突破済みだった福部は、3位以内に入れば日本代表の座を射止めることができた。しかし、ライバルとなる青木益未(七十七銀行)と田中佑美(富士通)もワールドランキングで出場圏内に付け、寺田明日香(ジャパンクリエイト)も日本選手権の結果で圏内に浮上することが見込まれていた。 有力候補が4人なのに対して代表枠は1国3人。その日本代表を決する決勝戦は4人が並ぶようにフィニッシュラインに駆け込んだが、福部は4位に終わり涙を呑むことになった。 ただ、福部はこの失敗を失敗のままに終わらせなかった。 「2年前は、急に日本一になって、日本代表になって、日本記録保持者にもなって、自分の競技のキャリアのなかでいろんなものが一気に押し寄せてきた。去年も、日本記録保持者として標準記録を突破した上で日本選手権を迎えたが、自分的には(実績に気持ちが)追いついていなかった。 でも、この1年を踏まえた上で、今年は自信をもって“自分が日本記録保持者だ”っていう少しのプライドとチャレンジャー精神で走ることができました。それが大きな違いなのかなと思います」 苦い経験を成長につなげ、昨年の決勝レースを「今はもう失敗とは思わない」と言い切れるだけの自信を手にし、今大会に臨んだ。 今年に入ってからは、2月のメルボルン、4月の織田記念、5月のセイコーゴールデングランプリと田中の後塵を拝してきたが、この日本選手権にはきっちりと合わせてきた。 予選が12秒85、準決勝が12秒75、雨に見舞われた決勝も12秒86と、いずれのラウンドも全体のトップ。やはり今大会の福部は、一番強かった。 惜しくも100分の3秒差で敗れ2位に終わったのが田中だった。田中にとっては日本選手権の過去最高順位だが、フィニッシュ後には悔しさを募らせていた。 パリ五輪の出場資格を得るには、有効期間内に参加標準記録を突破するか、ワールドランキングでターゲットナンバー(出場枠)の40位以内に入らなければいけない。田中は5月のセイコーGGP2位、昨年のアジア大会3位の実績のほか、冬季には海外遠征し、室内のレースや大会のカテゴリーが高いレースで着実にポイントを積み上げてきた。 セイコーGGPを終えた5月半ばの時点では33位と、十分に出場できる順位につけていた。しかし、田中が想像していた以上に世界のレベルは上がっていた。いつの間にかランキングは出場圏のギリギリになっていた。 「自分が本当に欲しいと思うものってなかなか少ないんです。今回はポイントを稼いだ時点で(五輪代表の座を)手に入れたつもりでいたんです。それが自分のポジションが大きく変わっているのに気づいて、その中でベストを尽くすのはすごく大変でした。でも、その中で力を発揮してこその強さだと思うので、それを目指してやってきたのですが……」
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