元衆院議員・金子恵美、いま改めて考える“公用車ベビーカー”問題。女性議員増やすための「クオータ制」なぜ必要か?
議論できぬまま政権批判の材料に
政務三役は総理に任命責任があります。当時の安倍政権下、野党からすれば格好の政権批判の材料というわけです。「なんと言われてもルールに則っているなら使い続ければいい」という意見もありました。でも問題が変に大きくなってしまったことから、当時の高市早苗・総務大臣とも相談して、いったん退くことに。「今後は保育所への送迎に公用車は使わない」と表明しました。 でも、その判断は間違っていたかもしれません。これから子育てをしながら政務三役などのポストに就く人はますます増えていくでしょうから、私はこれをきっかけに公用車の意味づけや子育て中の議員の働きやすさについて一度しっかり議論して、ルールに則っているから問題ない、と国民の皆さんにご理解いただければと思っていました。 その議論を深められないまま、あっという間に次の選挙になり、私は落選。その後も、同じように政務三役の女性が公用車で保育園に行ったことが週刊誌に報じられたことがありました。あのとき議論を深められなかったがために、また同じように女性議員が叩かれてしまったことは、とても無念でした。
国会での「マタハラ」「マミートラック」
そもそもこの問題の背景には、今まで子育て中の女性政治家があまりいなくて、政務三役が公用車に子どもを乗せるというシチュエーションが想定されてこなかったことがあると思います。議員の中心は男性。日本では国会議員に「育休」制度がないということにも通じていると思います。民間では当たり前になりつつある制度が、本来社会を作るべき政治の世界にはないというのが現状なのです。 妊娠中や子育て中の議員に対する不寛容さ、今で言えば「マタハラ」や「マミートラック」にあたるものを感じたことは、妊娠中から何度もありました。私はお腹が大きい状態で本会議や委員会に出席していました。私が所属していた予算委員会は、テレビ中継も入る、いわば“花形”のポスト。まだ出席できると言っても、先輩議員からは「いつ休んでもいいよ」と言われました。ただし戻ってくるときはそのポストはない――。そんな思いが透けて見える言い方でした。 夫も議員在職中に「育休宣言」をしたことで、毎日のように先輩議員に呼び出されて撤回するように言われていました。男性の育休は自民党にとってはリベラル寄りですからね。私も一緒にいるところで、「お前たち馬鹿のせいで自民党は迷惑を被っているんだ」とはっきりと言われたこともありました。政治の世界では、妊娠や子育てをしながら働く議員がいること自体が違和感あることだったのでしょう。それでは女性議員が増えるはずがありませんよね。 ただ、実は女性の政治家が増えてこないのはなぜかと言ったら、政治家だけでなくやはり有権者の意識改革も必要だと私は思うんです。女性が立候補したとしても、夜の会合や地域のお祭りへの参加、長時間ひたすら握手して歩くとか、旧来のやり方が評価されるような選挙戦では、女性の政治家はなかなか生まれません。