原宿で40年以上続く手作りカレー店。若者のおなかと心を満たしてきた“お母さんの味”のこだわり
見てください、このビジュアル。もったりとした粘度の高いカレーソースがお皿を埋め尽くしています。具材は牛肉、じゃがいも、にんじん、玉ねぎ。子どもの頃におうちで食べていたカレーの記憶がよみがえります。
カレーの上に鎮座する、お母さん自慢の手作りコロッケ。まあるく、かわいらしいフォルムに、カリカリの衣がカレーソースをまとい、黄金色に光り輝いています。 これは間違いなく、“映え”ですね。個人的に。
家庭の味っぽい見た目ですが、一口食べるとその本格的なスパイシーさに驚きます。いくつもの調味料や材料を使っていることが感じられる、複雑で濃厚な味わい。そこに野菜や牛肉のうま味が絡み合い、しっかり濃いめの味に仕上がっているカレーソースに食欲がどんどん刺激されます。 一つ一つの具材が大きめなところもうれしいポイントです。特に牛肉が硬すぎず、柔らかすぎずの絶妙な食感で、かめばかむほど甘みとうま味が広がります。
コロッケは厚めで歯ごたえのある衣の中に、ホクホクの具がぎっしり。ほんのり甘く、素朴な味わいだからこそ、ドロッとした濃い味のカレーソースとの相性がたまりません。衣をカレーソースにたっぷり浸してごはんと一緒に食べると、それだけでもう幸せです。
中村さんの優しさが、「お母さんの味」の調味料に
──とってもおいしくて心がほっこりするカレー、ごちそうさまでした! 子どもの頃に親が作ってくれたカレーの味に似ているけれど、お店で食べるカレーならではの重厚なスパイス感のある、絶妙な味わいですよね。 中村:よかった。みんな「お母さんの味」って言ってくれるの。 ──カレーの味わいはもちろん、中村さんの優しいお人柄からも「お母さんの味」を感じます。 中村:実家を出てきて都会で暮らしている若者も多いですから、私みたいなおばちゃんに親しみを感じるのかもしれないですね。「おばちゃん、おいしかったよ」、「また来るね」って声をかけてくれたり、「ちょっと聞いてよ」って仕事やプライベートの悩みを相談してくれたりね。 ──そうなんですね。原宿は若者が多いだけでなく、個性的なファッションの方も多いじゃないですか。最初は抵抗感とかありませんでしたか? 中村:そんなこともなかったね。それこそオープン当時は竹の子族の子たちがたくさんお店に来たけれど、みんないい子だったよ。今も奇抜な髪形やファッションをしている子、タトゥーをしている子がいっぱい来るけれど、みんなすごく優しいの。お店を始めてから嫌な思いをしたことは一度もないよ。