原宿で40年以上続く手作りカレー店。若者のおなかと心を満たしてきた“お母さんの味”のこだわり
──若者カルチャーが一気に入ってきたと。 中村:そうそう、ちょうどうちの隣に竹の子族の洋服店ができて、いつも若い子たちが並んでいたわ。そんなふうに街がどんどん活気づいていくにつれて、もともと住んでいた人たちは土地を売ったり貸し出したりして引っ越していったの。やがて私の父と母も別の場所に移り、その跡地に妹がお店を出したのが始まりね。ONDENっていう名前も、ここの地名が穏田(おんでん)だったことに由来しています。けっこうシンプルなのよ(笑)。 ──そうだったんですね。中村さんはもともと飲食店のご経験があったんですか? 中村:いいえ、素人でした。ちょうど子育てが終わって時間が取れるようになったので、せっかくなら何かやってみようと思って始めたの。 ──なぜ、数ある料理の中からカレーを選んだのでしょうか? 中村:カレーが一番手っ取り早いし作り慣れていたから(笑)。それに、私はコロッケを作るのも得意だったの。だから、最初はカレーにコロッケをのせるメニューを考案したのよ。そのうち唐揚げやハンバーグなどのトッピングも増やしていったけれど、コロッケカレーは今でもうちの看板メニューだね。
──確かにONDENといえば、ゴロッと大きなコロッケがのったカレーのビジュアルが印象に残っています。そうすると、カレーのレシピも家庭で作っていたものをベースに? 中村:そうね、でも随分と研究しましたよ。当時はいろんなお店に食べに行き、材料や味を調べていました。シェフに「すごくおいしいですね。何が入っているんですか?」とさりげなく聞いてみるの。それはもう、数えきれないほどのカレーを食べましたよ。そこから自分なりに材料を組み合わせて、何度も試作を重ねてレシピを完成させました。 ──スパイスの種類もけっこう多いんですか? 中村:スパイスはもちろん、生クリームや牛乳など、いろんな材料を組み合わせています。材料を入れる順番や火加減など、作る工程でも仕上がりはけっこう違ってくるのよ。同じように作っても、みんながみんな同じ味にはならない。そこがカレーの面白いところよね。