三井物産・住友商事…大手商社の4-9月期、7社中4社が当期減益の背景事情
大手商社7社の2024年4―9月期連結決算(国際会計基準)が6日出そろい、4社が当期減益となった。中国経済の不振を背景に原料炭や鉄鉱石といった資源価格の下落が響いた。一方、成長分野へのシフトに向けた事業売却益などがプラスに寄与し、三菱商事が前年同期比32・6%増となったほか、三井物産は25年3月期業績予想を上方修正した。期初予想比では各社が利益を順調に積み上げており、国際情勢の不安定化に対応しながら成長投資を急ぐ。 住友商事は資源安に加え北米の鋼管市況の軟化が収益を圧迫。双日は石炭相場の下落が響いた。 丸紅は米国の穀物市況の悪化で農業資材販売が低迷。一方、米国の航空機事業などが好調で、非資源分野は25年3月期に、一過性損益を除く実態当期利益が4年連続で3000億円程度を見込む。「基盤強化は着実に進んでいる」(古谷孝之最高財務責任者〈CFO〉)とし、25年3月期の成長投資枠を700億円増の6500億円に拡大した。 伊藤忠商事は鉄鉱石など資源価格の下落で140億円のマイナス影響があった。一方、ファミリーマートの中国事業の再編で一過性利益を計上したほか、食品事業は人流拡大を捉えて好調に推移。当期利益は前年同期比6・2%増の4384億円となった。 三菱商事は原料炭事業の一部売却に関連して900億円、KDDIとの共同経営に移行したローソン株の再評価益などで1225億円を計上した。通期業績予想に対する当期利益の進捗(しんちょく)は65%と高い。一方、資源市況の不確実性などを踏まえ、25年3月期業績予想を据え置いたほか、26年3月期は前期の事業売却益などの反動が想定される。 ただ低成長事業の入れ替えなどによる利益改善効果は、中期経営計画が始まった23年3月期からの3カ年累計で約1000億円を見込むなど稼ぐ力の強化が進展。25年3月期は「次の成長ステージに向けた取り組みに注力する年度」(中西勝也社長)としており、既存事業の基盤固めや成長投資を推し進める。 三井物産は25年3月期当期利益予想を期初公表比200億円増の9200億円に上方修正した。インドネシアの石炭火力発電の売却益の上振れなどを反映した。原料炭などの相場下落が利益を圧迫する一方、新規事業の稼働や事業効率化などによる基礎収益力の拡大は、中計初年度の24年3月期からの2カ年累計で1200億円を見込む。 足元では米国の新政権の行方や地政学リスクが注視されるが、各社は環境変化に対応しながら競争力の強化を急ぐ。農業や航空機、自動車など生活に近い領域を中心に米国事業で当期利益の約3割を稼ぐ丸紅は「(米国の政策に)適応しながら先手を打ち、米国事業を積極的に強化していく」(古谷CFO)とし、厚みのある米国需要の取り込みを狙う。 気候変動対策ではデジタル化に伴う電力消費の増大が課題となっている。三菱商事は「(脱炭素への)トランジション(移行)期の安定したエネルギー源として天然ガスをみる必要がある」(中西社長)とした。9月にマレーシアの液化天然ガス(LNG)事業の権限延長などを決定し、25年半ばまでにはカナダのLNG事業で出荷開始を見込む。 三井物産はアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ国営石油会社(ADNOC)主導のLNG事業に、石油メジャーの英BPや英シェルとともに参画。中東情勢の緊張が続く中、「大手パートナーやホスト国の力を借りることが肝要」(重田哲也CFO)とした。