日経平均最高値は「真のバブル超え」か?“中進国”への転落なのか...キーフレーズとなるインフレとスタグフレーション
上位陣はスタグフレーションの容疑濃厚
図表(1)における上位陣は高インフレと通貨安が相まって実質所得環境が悪化し、実質消費が停滞している国が多い。端的に言えば、スタグフレーションかそれに近い症状を患っている国々だ。 例えば22~23年のインフレ率を見ると、多くの国は2ケタに達しており、中には3ケタの国すら見られる。こうした中、日本のインフレ率は非常に抑制されているケース(+2.8%)だが、00年から21年までの平均が+0.09%であったという経緯を踏まえる必要がある。 その状況から22年が+2.50%、23年が+3.27%(2024年IMF予測が+2.24%)と明らかに段差のある変化に直面している。「デフレの終焉、インフレの始まり」と解釈するのも無理からぬ状況と言えるだろう。
デフレ下では伸びない賃金、伸びない株価、伸びない物価などが問題視されてきた。仮にインフレが始まるのであれば、その逆回転(賃金・株価などの上昇)は予見される。 スタグフレーションの容疑はGDPの名実格差からも読み取ることができる。23年のGDPを例に取れば名目では+5.7%成長であったのに対し、実質では+1.9%と3分の1以下に縮まった。 需要項目別に見ると、例えば家計最終消費支出は名目では+3.7%増加していたのに対し、実質では+0.6%とほとんど増えていなかった。この間、雇用者報酬を見れば名目で+1.7%増えているが、実質では▲1.8%減っている(図表(2))。 要するに、円安や資源高を背景とするインフレ税によって実質所得が目減りし、消費に回せる部分が減っているということだろう。スタグフレーションという症状が政府・日銀から公式に認定されることはないが、状況証拠はそうなっているように思える。
日本は格差拡大へまい進
なお、インフレ税が発動している背景は円安や資源高といった外生要因だけではなく、人手不足という内生要因も効いていることは周知の通りだ。だとすれば、相応に持続性もあるかもしれない。 図表(3)を見る限り、このような状況は22年10~12月期以降に始まっており、24年に入ってからは一段と状況が悪化している。明らかにインフレにより実質的な成長が食い潰されており、その代わりに株価や不動産などの資産価格が急騰している状況がある。この状況を放置すれば、確実に日本社会の格差は拡大していくであろうし、それをもう実感しているという向きも多いかもしれない。 今の日本社会では円安の功罪を問う議論も散見される。この点については紙幅の関係上、今回は詳述を避けるものの、筆者は「最後は分配の問題」と強調するようにしている。 日本では「円安で得する層」と「円安で損をする層」の間に断絶がある。必然、円安は優勝劣敗を徹底する相場現象として注視せざるを得ない状況にある。 最近のGDPの名実格差や、それを横目に起きている株式を筆頭とする円建て資産価格の急騰を見る限り、まさに日本経済は分配上の問題、端的には格差拡大の問題に向かってまい進しているように思えてならない。
唐鎌大輔