店主が倒れて急遽閉店した名店「つばめ屋」跡地に新たな立ち食いそば屋が…59歳と72歳をつないだ“奇跡的な展開”とは
細身のそばは抜群のコシで出汁香るつゆもすばらしい
つゆはきれいなむらさきだ。まずつゆを一口。おっ! これは出汁が良くきいている。 本鰹節、鯖節、宗田節を使っているとか。返しはいい塩梅で、出汁を上手く持ち上げている。これは上質な一杯だ。
店主がとったきみさんへのコンタクトの経緯
三上店主の手が空いた頃、お店を始めた経緯を聞いてみたのだが、これがまたすごく面白いのだ。 三上店主は和食の板前やふぐの調理などに33年間も携わってきた和食のプロだった。そばが好きなので、いつか自家製麺のそば屋をやりたかったという。テリトリーは立会川なので、この辺りで店を探していたとか。平和島は乗降客も多い。 しかし、立ち食いそば屋が少なくなっていた。平和島の「つばめ屋」がしまっていたことも把握していたのだが、不動産屋に行ってもその物件情報は出てこなかった。立地がいいのでここでやりたいけど、さて、どうしたら借り主にコンタクトできるのかわからない。 「そんな時、ネットで調べるとある記事が出てきたんです。『 満身創痍とは私のことよ 』ていうタイトルの記事で。それで連絡先がわかってきみさんと会うことができた」という。今年の6月頃のことだ。その話を聞いてびっくりした。その記事を書いたのは私だったのだ。 きみさんは「つばめ屋」は息子さんが始めた店なので手放したくなかったそうで、できれば知り合いや心意気のある人にそのまま使ってもらいたいと考えていたそうだ。三上店主はすぐにきみさんに会って、自分の意志を熱心に伝えて、晴れてこの店を使わせてもらえることになったというわけである。
冷しのそばのコシが心地よい
そんな話を聞いていて「野菜天そば」を一気に食べてしまったので、「冷しきつねそば」を追加注文することにした。きみさんは店が始まってから何度も食べにきてくれたりアドバイスしてくれていると三上店主は感謝していた。 きみさんはお元気かと聞くと、隣でたまたま食べていたオジサンが2軒となりの「立ち飲み処きみちゃん1号店」の常連で、近況を教えてくれた。それによると、少し前まで再入院されていたけど、つい最近退院したという。 登場した「冷しきつねそば」のつゆをまたひとくち。こちらはやや濃いめのつゆである。そばは茹でたてでキリッとして細めのそばのコシがすばらしい。どんぶりいっぱいにのったきつねも甘辛く炊いてあり和食の余韻が広がる。つるつると心地よいそばを啜りつゆを飲む。きつねをかじってまたつゆを飲む。