アマゾンのCMで注目 偉大な父をもつ、実力派俳優・北村有起哉の成長と葛藤
今年たびたび流れたAmazonのCMで、注目を浴びた俳優がいる。北村有起哉さん(47)。CMでは仕事に忙殺される夫役でリアリティーのある演技だったが、それには一つ秘密があった。そしてこの秋、デビュー24年目にして初の主演ドラマも放送。勢いに乗っている。たしかな演技で実力が評価されることに喜ぶ一方、本人には名俳優の父をもつ悩みもあった。(文:長瀬千雅/写真:伊藤菜々子/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
恥ずかしくて見られないあのCM
今年4月からテレビやYouTubeで流れているAmazon PrimeのCMがある。互いに忙しくてすれ違いがちな夫婦。そんな状態を憂慮した夫が、ある日、妻に手渡したのは「いつでもこの頃に戻れる券」だ。古いプリクラにほおを寄せ合う二人が写っている。妻は照れくさそうにうなずく。 ドラマ仕立ての映像が共感を得た。SNS には「このCM観て泣かされました」「すきすぎて定期的に見ている」というコメントが並んだ。
夫役を演じているのが、俳優の北村有起哉さん(47)だ。CMの話になると、照れたような笑顔になる。 「ぼくはまだまともに見たことがないんですよ。YouTubeで流れてきた瞬間に、パソコンをパタンと閉めちゃう。で、そっとのぞいて広告が変わったのを確認してから、開けるんです」 照れるのは、妻役を演じている女性が本当の妻だからだ。女優の高野志穂さん(42)。高野さんは2002年のNHK連続テレビ小説「さくら」でヒロイン役を務めた。2013年に結婚し、この数年は出産や育児で仕事を抑え気味にしていた。北村さんのもとでCMの話が進みだしたときには、相手役はまだ決まっていなかった。
「あとから高野志穂に決まったと聞いて、『え?』ってなりましたよ。でも、絵コンテをもらったときから余韻が残るようないいCMだなと思っていましたし、彼女にとっては久しぶりのお仕事というのもあったし。これは夫婦にとっての記念というか、プレゼントみたいなものかなと」 CMはリアリティーを感じるが、「うちはああいう夫婦関係ではないですよ」と笑って否定する。使われているプリクラも本物ではない。 「あれはわざわざ撮ったものです。若いメイクをして合成して。最近のプリクラは加工したり、いろいろできますけど、昔風に、小さいプリクラをつくっているんですよね。当たり前ですけど、演技ですから。我が家の夫婦関係はもっと現実的ですよ。撮影が決まって真っ先に話したのが、『その日子どもどうする?』でしたから。小さい子どもが2人いるので」