寿命は1000分の2秒、日本の名を冠した「ニホニウム」は基礎研究のたまもの
新元素を合成する意義はどこに?
現時点で、ニホニウムはどういった用途に利用できるのかわかっていません。ニホニウムのような新元素を合成する意義はどこにあるのでしょうか。森本さんは「新元素はすぐに役立たないかもしれませんが、役に立つ技術の開発は、ゼロからはじまるものではなく、こうした数々の基礎科学の知見を使って行われるものです」として、基礎科学の重要性を強調します。 たとえば、1937年に、発見されたテクネチウムという元素があります。当初、何に役立つのかわかっていませんでしたが、現在は血流測定などの医療用途で活用されています。「ニホニウムも、今は1個や2個つくるのも大変ですが、今後、科学的な特性があきらかになって量産技術も確立されれば、有益な用途が見つかる可能性があります」。 現在、元素は118番まで見つかりました。森本さんたちはいま、119番、120番の新元素を合成する準備を進めており、早ければ来年1月からの実験開始を予定しているとのことです。 (取材・文:具志堅浩二)