灘中学など最難関を突破する算数学力、必要な思考力養うのは「コツコツ習得」か「熱中思考」か
■「習得」と「思考」のバランス
「SAPIX流 中学受験で伸びる子の自宅学習法」(小川晶子著 サンマーク出版)では、知識を付ける学習と、思考力を付ける学習は分けて考えることが大事であるとして、それぞれに取り組む際のポイントを次のようにまとめています。 ・「習得」は時間効率を重視して取り組む ・「思考」は時間効率を無視してじっくり取り組む 特に最難関校志望の場合は、「習得」と「思考」のバランスをいかに取っていくかが入試本番につなげるための最重要課題となります。しかし実際は、「思考」する経験が不足している受験生が少なくありません。 大手進学塾に通い、そのカリキュラムに沿って学習することは「習得」には非常に有効であるものの、「思考」という面においては、個人任せになっているケースがほとんどです。 大手進学塾の多くが「授業→宿題→復習テスト」という学習サイクルになっていて、授業で習ったことを基に、どれだけ多くの問題をいかにスピーディーに解くことができるかという「習得」の度合いを競い合うシステムになっているのが、その大きな理由でしょう。 最難関中学を受験する場合、誰もが学習するようなパターン問題を確実に取るだけでは合格点に届きません。合否の分かれ目となる問題を攻略するには、日頃から自力で難問を考え抜く体験を積み重ねていくことによって、難問への耐性を付けておくことが不可欠です。
■難問への耐性を付けるには
お子さんのこれまでの学習において、「思考」する体験が少なく、難問への耐性が付いていないと感じる場合は、拙著「最高水準問題集算数」(文英堂)に取り組んでみてはどうでしょうか。 ただし、その目的はもちろん「思考する」ことですから、取り組む上での注意点としては「習得学習」の延長上に位置付けてはならないということです。つまり、「5分考えて分からなければ解説を読んで手順を覚える」のではなく、初見の問題に対してどれだけ粘り強く考え続けることができるか、「読解・整理」や「試行錯誤」に十分時間をかけて学習することが肝要です。 本書に掲載している入試問題は、私立・国立中学校の力量豊かな先生方による創意工夫に基づいた傑作であり、思考力を養成する問題の宝庫です。どれも一筋縄ではいかない問題ばかりで、中には何日も考えさせられるものもあります。だからこそ「チャレンジする価値」があるのです。 さらに、本書の別冊解答集には、それぞれの問題の出題傾向や出題意図を分析した「問題分析」を示しています。解いて解説を読むごとに、新たな発見があるでしょう。 また、毎年多くの中学校の入試問題で本書に掲載されている問題の中から類題が出題されています。例えば、灘中学校の第2日入試では、立体図形の類題が、昨年度、今年度と2年連続で出題されています。最難関中学の入試本番に向けての十分な対策となるはずです。