福岡県に600年の歴史をもつ最高級茶葉が存在した!銘茶「八女茶」を知っていますか?
◆量より質を求めて 八女茶の特徴は、新芽の数を少なくして葉を大きくしっかり育てる芽重型(がじゅうがた)の栽培方法を採用していることです。このため、八女茶の収穫は、ほとんどが二番茶までしか摘み採りません。 お茶の品質や味は、葉を摘む時期によって差がでます。 若く柔らかいうちに摘んだものが一番茶(新茶)で、これ以後は摘採の順に二番茶、三番茶と呼びます。一番茶は長い休眠状態を経て萌芽するのでアミノ酸類の含有量が十分に高まりうま味感が増加します。 芽重型で芽を育てたお茶は、強いうま味とコクを味わえます。他産地の緑茶に比べて味が濃厚であること、苦渋味が少ないことが八女茶の最大の特徴です。 福岡県の荒茶生産量が栽培面積の割に少ないのは、こうした量より質を重視した芽重型の栽培や、その摘採回数が少ないことによるものです。
◆茶栽培に適した「冷涼多雨」の地 お茶の品質は生産地の気象条件や土壌条件から大きな影響を受けます。茶樹は温暖で湿潤な地域で育てやすい植物のため、特に気温と降水量に左右されやすい性質を持っています。 気象条件としては、年間の平均気温が14~16℃くらいであること。年間降水量が1300ミリメートル以上で、生育期間にあたる4月から9月までは1000ミリメートル以上が目安となります。 八女地方の気象は、日中の気温が高く、夜間は冷え込む内陸性気候で、矢部川流域の山あいでは朝、夕に霧が多く立ちこめます。加えて、年間1600~2400ミリメートルと降水量も多く、いわば「冷涼多雨」。高級煎茶や玉露、かぶせ茶などの栽培には、非常に適した環境にあります。 昔から山間地で育ったお茶はおいしいとされていますが、実際、銘茶の産地といわれる地域は、八女地方のような川沿いの山間地に多く、朝夕に濃い霧がかかるところが多いようです。 なぜ、山間地のお茶はおいしいのでしょうか。 山間地は、平地に比べると日照時間が短く、気温も低く、さらに昼夜の温度差が大きいのが特徴です。そのため新芽の成長が遅く、摘み採る時期も遅れますが、新芽がゆっくりと伸びるので、うま味成分が長く保たれるのです。 また、周囲の木々が茶畑に自然な日陰を作ることによって、カテキン類が少なく、アミノ酸類は多くなる傾向があります。つまり、苦味や渋味が控えめで、うま味や甘味が多く含まれた茶葉に育つというわけです。 ※本稿は、『八女茶――発祥600年』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。 (撮影=延秀隆)
福岡の八女茶 発祥600年祭実行委員会