オフロード特化型【BMW R1300GS GSスポーツ試乗】車高は足着き不安なレベルに高いが…ツーリングライダーでも楽しめるのか?
オフロードタイヤの採用で、舗装路でもかなりフィーリングが異なる
先に「ツーリング」に乗り、次に「GSスポーツ」へ乗り換えたのだが、舗装路の走り出しでまず驚いた。車高が上がって前輪が少し遠い感覚になったのに加え、「ツーリング」にあった濃密な前輪の接地感が薄れてタイヤが軽く転がる。 そして、最初のコーナーでは倒し込みでグリップが抜けるような感触を覚えた(実際は抜けていない)。 普段はヤマハ セロー225を愛用する身として、オフタイヤの感触に慣れているはずだが、「ツーリング」から「GSスポーツ」への乗り換え直後の差にも増幅され、そんな第一印象を持った。軽量級オフモデルに比べ、R1300GSではパワーや重量の大きさも影響して接地感の差を大きく感じるのだろうか。 ただし、違和感があったのは走り出して10~20分ほど。その後は慣れてくるが、舗装路でのベタッと食いつくような「ツーリング」の感覚でコーナーを攻めると、痛い目に遭うだろうと想像はできる。オンロードでは、「ツーリング」で攻めるところの7割くらいにセーブするのが賢明だろう。 前述の感触を意識した後、高速道路に乗った。80km/h程度の低い速度では、オフタイヤ特有の「ウォンウォン」としたロードノイズが少し耳に届く。しかし、そこから開けていくと風圧がそれを上回って気にならなくなる。 ちなみに「GSスポーツ」のスクリーンは、他の仕様に比べて少し低くて幅もスリム。これもダートや林間走行で、障害物からのボディ損傷のリスク低減をねらった仕様だが、防風や整流の機能性はちゃんとある。手動で高低を調整でき、低めでは整流の効果程度、高めではヘルメットと胸まわりの直接風を逃すから、コンパクトでも効果は実感できる。 高速でのエンジンの回り方は、「ツーリング」と変わらない。ギヤレシオ関係も同じだから当然だが、トップ6速時のメーター読みで80km/h≒2750rpm、100km/h≒3400rpmと加速&回転上昇していく感じも同じだ。異なるのは速度を増速していってもフラットツイン特有の路面に張り付くような接地感が乗り手に染み入ってこないことだ。 それもタイヤの違いによるところが大きいのだが、「GSスポーツ」に標準装着のカルー4は、BMWのGSでオフロードを楽しむライダーたちから「オンとオフのバランスがよく、ライフもそこそこ長いオールラウンドなタイヤ」と高く評価されている。だからこそ「GSスポーツ」に純正採用されているに違いないが、ダートを走る目的がなければ履くメリットを活かせないだろうと思った。 ユーザー層から考えるとこんな風にする人はあまりいないだろうが……、「GSスポーツ」特有の長いサスでの路面とのコンタクトや、高い着座位置からの旋回性を含め、オン寄りのタイヤを履かせても「GSスポーツ」独自のフィーリングで楽しめそうだとも感じた。 オフはそんなに走らないけれど、「GSスポーツ」の車体の足の長さがカッコいいと感じる人は(筆者はそのひとり)、スポーツにアナキー・アドベンチャーや、ツアランス・ネクスト2を履かせて楽しんでもいいかもしれない。