《貸金庫から窃盗》三菱UFJ元行員はなぜ“他人のお金と自分のお金の見境”がわからなくなったのか? 真面目な人間を暴走させた“銀行員のストレス”を考える
三菱UFJ銀行の貸金庫の管理責任者が顧客の資産を着服する事件が発生した。もし、その管理責任者と同じ立場だったら何を考えただろうか──『女性セブン』の名物ライター“オバ記者”こと野原広子さんが綴る。
* * * まぁ、次から次へと腰が抜けるようなことか起きるから、年を取るのを忘れそうだわよ。 つい先日の三菱UFJ銀行の事件もそう。 貸金庫の管理責任者が十数億円相当の金品を盗んだ事件だけどね、信用第一の銀行が信用ガタ落ちを覚悟で警察に被害届を出したんだから、闇はかなり深そうだわ。それにしても、銀行員が客のお金に手を出すか?と首をひねったところで、遠い記憶がよみがえってきた。 ずいぶん昔のことだけど、取材で、さまざまな業種の女性に「社内結婚・社内不倫」というテーマで話を聞いたことがある。 で、何人かの銀行員を取材したとき、取材後に必ずこう聞いてみたの。 「恋愛というテーマとまったく関係ありませんが……銀行に勤めて、毎日毎日あふれかえる現金を目にしていたら、(このお金を自分の財布に入れる方法は何かないか)とふと考えることはありませんか?」と。私だったら、新人研修でお札を扇の形に広げて数える練習をしながら、そんなことばかり考えそうだもの。 で、銀行員たちの返事は10人が10人いっしょ。「お店で見る札は商品です。色や柄は同じでも、自分の財布の中のお札と同じには見えないんですよ」と。そして、「現金と帳簿が1円でも合わなければ、何時間かけてでも帳尻は合わせる」というのも「本当です」とキッパリよ。 そんななか元銀行員の女性がこんなことを言ったの。 「銀行員という仕事のストレスは数多くあるけれど、いちばんのストレスは、他人のお金を触っていること。自分が朝から晩まで働いて手にする給料と、お金持ちが蓄えている金額との天文学的な開きが身に染みるから。伝票を見ているだけならいいけど、時に金持ち本人が現れて、『娘たちとハワイ沖でクルーズしてきた』なんて言ったりしますからね」 そう言ったN美さん(当時31才)は、銀行を辞めて風俗嬢になってから数か月。「月収が銀行員時代の年収とトントンになった」と胸を張っていたっけ。