「もっと値段を下げさせろ」取引先の理不尽な要求を突っぱねるために若手営業が使った"奥の手"
一度は合意した条件に対し、相手から無理な交渉を迫られた場合は、どのように対応すればいいのか。ビジネス交渉コンサルタントの生駒正明さんは「『これ以上は対応できない』というラインを定め、確固たる意志で対応することが重要。その説得力を増すためには、交渉相手と自分だけではなく、関係者など外部にも影響が及ぶことを説明することも必要だ」という――。(第2回/全2回) 【この記事の画像を見る】 ※本稿は、生駒正明『なぜかうまくいく交渉術』(秀和システム)の一部を再編集したものです。 ■受けられない無理な値引きを要求された ときには「相手先から無理な交渉を迫られた」ということもあるでしょう。こちらとしては受け入れられないが、相手も強気で聞く耳を持ってもらえない……そんなこときはどう対応すればよいのでしょうか? 私がアパレル会社との取引時に経験したエピソードから対応のポイントを紹介します。 私は当時、生地を素材メーカーから仕入れ、それを縫製工場で製品にし、アパレル会社に納めるという仕事をしていました。そのアパレル会社は、生地価格を下げさせれば、製品の単価も下がるだろうと、私に圧力をかけてきたのです。 アパレル会社で打ち合わせをしていたとき、先方から、「縫製工場の工賃がこれ以上下がらないなら、素材の価格をもっと下げさせろ」と厳しい要求をされました。 さらに、「できないなら、私が直接素材メーカーと話をする」とまで言われました。 この無理な要求に対して、私は強く断る決意をしました。 一度決めた生地価格に対して、理不尽な値下げを受け入れるわけにはいかないと考えたからです。これは、素材メーカーを守るためでもありました。 その担当者が直接電話をしないように、目の前で、私が素材メーカーの担当者に電話をかけたのです。 「今、アパレル会社で打ち合わせをしています。納期については問題ないですか?」「価格についてですが、もうこれ以上は無理ですか?」「わかりました。できないということですね、了解しました」と小芝居のような会話を一人で続けたのです。 電話先の素材メーカーの担当者はすぐに状況を飲み込んでくれたようでした。 私の電話を聞いていたアパレル会社の担当者は、私と素材メーカーの関係性やギリギリで進んでいる納期の状況を理解したようでした。