「総工費5億円」が今では廃墟に…あの『極悪女王』でも話題 37年前“全女”全盛期に完成の“伝説の施設”「リングスター・フィールド」を訪ねてみた
松永会長「スター選手の“寿命”は3年」
松永高司氏は「25歳定年制」を設定した経営上の理由について、こう語っている。 「私の経験では、スター選手の“寿命”は3年です。人気上昇期が1年、絶頂期が1年、人気下降期が1年です。この3年間は、めちゃくちゃもうかります。しかし、その後はまた新しいスター選手が出てこないと、収支は赤字に転落します」(『日経ビジネス』1998年1月12日号) 中学を卒業したばかりの少女が、あらゆる誘惑を断ち切り、女子プロレスにすべてを捧げる――その限りなくイノセントな世界が、同世代の少女たちに深く訴求する現象を、松永氏はよく理解していた。もちろん、ファンの熱狂が時限的なものであることを含めて……である。 だが、90年代以降になると25歳での引退を拒否する選手たちが現れるようになる。 理由はさまざまだったが、その根底には苦労してつかみ取ったスターの座を簡単には手放したくないという選手の本能があったことは間違いない。 今井氏の回想。 「会長としては、選手たちに一生プロレスをさせるつもりはなくて、ケガをさせずに親御さんのもとへ返し、女性としての幸せをつかんでほしいという親心があったと思います。70年代から80年代の入門志望者の多くは、学歴もなく、複雑な家庭環境に育った子も多かった。ピークで辞めて、幸せになるのが一番なんだと。その考えには、会長の生きた時代が反映されているんですよね」 クラッシュ・ギャルズの引退後、全女の試合会場からは潮が引くように少女たちの姿が消え、入れ替わるようにプロレスを愛好する男性ファンが集まるようになった。「25歳定年」制度はブル中野の現役続行によって事実上、撤廃されたが、新陳代謝の鈍化は人件費の高騰に直結し、団体の経営に暗い影を落とすことになる。 <後編へつづく>
(「格闘技PRESS」欠端大林 = 文)
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