「総工費5億円」が今では廃墟に…あの『極悪女王』でも話題 37年前“全女”全盛期に完成の“伝説の施設”「リングスター・フィールド」を訪ねてみた
稀代の悪役レスラー・ダンプ松本の半生をモチーフにしたNetflix配信ドラマ『極悪女王』が大きな話題となっている。作中でも扱われている1980年代の全日本女子プロレスの人気は凄まじかった一方で、その栄華は振り返ってみれば一瞬の夢のような短さでもあった。あまりに華やかだった“全女”の時代の象徴とも言える、かつての超豪華施設を訪ねた。《全2回の1回目/後編を読む》 【現地写真】「今では廃墟に…」37年前“全女”全盛期の5億円施設「リングスター・フィールド」の現在の様子…現役時代のクラッシュ・ギャルズや『極悪女王』キャストの晴れ姿もあわせて見る(50枚超) 800年の歴史を持つ埼玉県・秩父市周辺の「秩父札所34観音霊場」。巡礼のスタート地点となる「第1番」四萬部寺からさらに北に向かうと、やがて荒れ果てた林道に通じる。 日差しも届かぬ鬱蒼とした山中の道を登っていくこと約1キロ。突如、切り開かれた空間が出現し、生い茂った植物の向こうに古いログハウス風の建物が確認できた。 いまはなき「全日本女子プロレス」(全女)が所有していたトレーニング施設兼合宿所、「リングスター・フィールド」である。
総工費は5億円、市街地から離れた山中に2000人のファン
バブル全盛期の1987年に竣工したこの施設は、全女が隆盛を極めた時代の象徴だった。 創業社長の松永高司氏が、友人に勧められるままに山林を購入。本邦初の「女子プロタウン」を建設すべく、取引銀行からの押し付け融資2億円を含めて何と5億円の予算が確保されたという。 林道がセメントで舗装され、傾斜地を削った広場が完成。そこに海外から取り寄せた高級木材による大型コテージが完成した。リングと小型のプールも併設され、山奥の豪華施設は当時、大きな話題を呼んだ。 こけら落としとなった同年11月8日のオープニングイベントには、秩父市街から遠く離れた山中に、2000人ものファン(しかも、ほとんどが10代の女性だった)が大挙押し寄せた。抜けるような青空が広がったこの日、長与千種とライオネス飛鳥の「クラッシュ・ギャルズ」がリング上で『炎の聖書』を熱唱。「極悪同盟」の総帥、ダンプ松本も新人の女子選手たちを蹴散らし、存在感を発揮している。 あれから37年の月日が流れた。 団体の倒産後も解体されることすらかなわず、廃墟と化したログハウスの周辺には、古いパンフレットや選手たちを撮影したポジフイルム、何かのトロフィー、商品化されたVHSビデオの類が散乱している。 屋根には穴が開いて、光と水が供給された床板にはすでに雑草が生えていた。人工のため池となったプールは、いまやシオカラトンボたちの絶好の産卵場所である。 かつて、この場所に響き渡ったであろう女性ファンの嬌声に思いを馳せたが、在りし日が蘇ることはない。あらゆる栄華を容赦なく置き去りにする、時の流れの残酷性はいつの時代も変わらない。 現在、大きな話題を集めているNetflix配信のドラマ『極悪女王』。 この作品に描かれた時代は、全女37年の歴史における絶頂期と重なる。 日本の女子プロレス史上、最大の成功をおさめたクラッシュ・ギャルズの伝説と、その好敵手であった「極悪同盟」のリーダー、ダンプ松本の半生。青春をリングに賭けた彼女たちの熱き時代と濃密な物語性には、往時の熱狂を知らない若者世代をも取り込んでしまう、ある種の魔力がある。
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