15年ぶりの大阪、劇団四季「ウィキッド」は胸を撃ち抜く衝撃だった
15年ぶりの大阪公演となる、劇団四季の人気演目『ウィキッド』が、8月15日から「大阪四季劇場」(大阪市北区)で開幕。アリアナ・グランデ&シンシア・エリヴォによる映画版が、2025年春の日本公開が決まったばかりという、絶好のタイミングでの幕開けとなった。 【写真】劇中の決意の表情、エルファバとグリンダ 『ウィキッド』は、童話『オズの魔法使い』で、主人公・ドロシーをサポートする「善い魔女」グリンダと、ドロシー一行に退治される「西の悪い魔女」エルファバの、知られざる友情を描いた物語。舞台は「西の悪い魔女が死んだ」という知らせに、オズの国の人々が歓喜しているところから始まる。そこにグリンダが登場するが、そのハイトーンの澄んだ歌声と、ファンタジックな大仕掛けによって、観客を一気にオズの世界へと引き込んでいく。 そして物語は、2人の過去へと突入。緑色の肌と激しい気性で周囲からうとまれるエルファバと、はなやかな雰囲気で誰からも愛されるグリンダは、大学でルームメイトになる。最初は反発しあったものの、お互いを深く知るうちにかけがえのない存在に。やがて魔法の才能を認められたエルファバは、この国を支配する「オズの魔法使い」との対面を果たすが、そこで思わぬ真実を知り、オズに歯向かう「悪い魔女」として生きる道を選ぶ──。
まずこの舞台で惹かれるのは、それこそ魔法に掛けられたかのように物語に没入させていく、ダイナミックな舞台美術と美しい楽曲の数々。エルファバをはじめとする魔女たちのかける魔法が、演劇のトリックによってあざやかに実現化していく様は驚きの連続だ。また楽曲も、エルファバとグリンダのデュエットを中心に、ことごとく胸を撃ち抜いていく名曲ぞろい。取り分け一幕ラストを飾る『自由を求めて』は、このシーンだけでも『ウィキッド』を観に行く価値があると断言できる。 物語の方も、世間には「悪」と思われているモノも、実は避けられない事情があるのでは?「善」と思われるモノも、本当に悪いことはしていないのか? など、現実の世界に思わず重ねてしまうような、奥深いテーマの数々が詰まっている。また『オズの魔法使い』を知っていると、特に後半は「ああ、これが原作の伏線か!」と膝を打つようなことがしばしば起こるので、できれば原作の小説や映画をチェックしてから臨んでほしい。特にラストのサプライズな展開が、より楽しめるはずだから。 『ウィキッド』は現時点で、2025年3月30日までのチケットを発売中。値段は日程により異なり、一番安いバリュー(平日夜)はS席1万2000円、A席9500円、B席7500円ほか。年内の公演は前売がほぼ完売しているが、当日券が出る場合もあるので、公式サイトなどでチェックを。 取材・文・写真/吉永美和子