世界のM&A最新事情…米大陸は大規模取引復活、EMEAは企業の野心的な買収際立つ、APACは成長が著しいがM&A自体は減少傾向に
世界のM&A市場では、曇り空のような状況から抜け出すべく懸命の努力が続いています。これまで吹き荒れていたインフレと高金利の嵐は落ち着きを見せつつも、将来的な困難の予兆はなお残ります。世界的な逆風はM&Aにどのような影響を与えたのでしょうか。また、熱視線を注がれるディールは出現するのでしょうか。※本記事は、Datasite日本責任者・清水洋一郎氏の書き下ろしです。 年収別「会社員の手取り額」
逆風のなか、注目を集めるディール出現の可能性は
世界各国に及んだインフレや高金利の嵐は落ち着きを見せていますが、世界のM&A市場には少なからぬ影響を及ぼし、また今後も何かしらの影を落とすであろうと推察されます。 しかし、そのような厳しい状況下にあっても、APAC(アジア太平洋地域)は世界のほかの地域と異なり、経済成長率はアメリカ大陸およびEMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)を上回り続けています。インフレの状況も欧米とは違い、中国は低インフレを経験しています。 世界的な逆風はM&A市場にどのような影響を及ぼしてきたのでしょうか。また、このような厳しい状況下にあって、注目を集めるディールは出現するのでしょうか。
アメリカ大陸:大規模取引が復活
これまでのアメリカ大陸全域のM&A市場は、比較的好調です。レバレッジドファイナンス市場の信用条件が緩和され、株式市場の好調なパフォーマンスにより、全株式取引がより実現可能になったため、大規模取引が増加しました。第1四半期の取引件数は前年同期比で28.3%減の2,864件でしたが、総額はほぼ75%増の5,700億米ドルと過去2年間で2番目に高い四半期記録となりました。 アメリカ北東部は、アメリカ大陸で最も活発なM&A市場として際立っています。合計696件の取引があり、この市場は地域全体のディール活動の約29%を占めています。これは、このサブリージョンが企業およびプライベートエクイティ(PE)のディールメイキングの中心地であることを示しています。 PE活動も復活しています。買収および売却の両方で、総PE取引額は前年比36%増の1,730億米ドルに達しましたが、取引件数は18%減の907件となりました。この復活により、スポンサー付き取引活動は過去18ヵ月で最高水準に達し、より持続的な回復の兆しとなる可能性があります。 エネルギー、鉱業、公益事業(EMU)および通信、メディア、テクノロジー(TMT)セクターは、企業M&Aの価値の強力な推進力であり、それぞれ1,328億米ドルおよび1,322億米ドルを貢献し、前年同期比でそれぞれ203.6%および84.7%の増加となりました。 取引件数の観点から見ると、TMTが712件でトップとなり、前年比31.5%減少しました。次いでビジネスサービス(431件)および医薬品、医療、バイオテクノロジー(369件)となっています。価値の観点からは、アメリカ、デンマーク、日本がトップビッダーであり、アメリカおよびカナダのビッダーがM&A取引件数でリードしています。
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