「不可逆的な体験」を訴求--拡大する無人店舗市場、NTTデータが描く道筋とは
最近は、セルフレジ型の店舗運営を実現するシステムも勢いを伸ばしている。会計のプロセスは必要だが、事前の会員登録が不要なものも多く、通りすがりに入店できるのが特徴だ。 コンサルティング事業本部 法人アセットベースドサービス推進室 SDDX担当 課長でCatch&Goの事業を統括する新原友美氏は「会員登録が必要ないことはメリットだが、ピーク時に多くの人が利用する店舗の場合、来店客がレジ前で滞留してしまう。来店人数が限られており、これまで出店が難しかった商圏では良い仕組みだと思う」と分析する。 西郷氏は「多くのセルフレジでは商品バーコードのスキャンが必要であり、従来店舗スタッフが行っていた業務を来店客に転嫁しているともいえる。いかに省人化を進めつつ、消費者へのサービスレベルを落とさないかが重要となる」と語る。 ウォークスルー型の店舗では事前の会員登録が必要となる中、NTTデータは2024年10月に開業した東急電鉄 二子玉川駅構内のローソン店舗において、会員登録の入口を専用アプリのダウンロードの代わりに、「LINE」公式アカウントの「友だち追加」とすることで、会員登録の手間や心理的負担の軽減を目指している。 会員登録のプロセスは、小売企業側にとっては利点もある。無人/省人化店舗では一般的に万引きのリスクが懸念されるが、Catch&Goの導入店舗では入店時に個人情報を認証する分、抑止につながっているという。加えて、専用アプリ上では来店客の購買履歴を基にクーポンを配信することで、再来店や購入点数の増加を図っている。 Catch&Goの導入店舗における買い物について、新原氏は「不可逆的な体験」と評す。来店客の多くは、一度体験すると「会計やレジ待ちが必要なほかの店舗には戻れない」という感想を持つという。 業界特化型のサービスは、導入企業の経営戦略の影響も大きく受ける。導入を希望する小売企業のニーズとして、人手が足りない既存店舗の運営継続や、収益化の観点で出店が難しかった職域などの小規模商圏「マイクロマーケット」への進出などがある。 会員登録が必要なCatch&Goの場合、利用者の人数や属性が限られているマイクロマーケットに適しているのではないかと考えられる。これに対し、新原氏は「小売店舗は飽和傾向にあり、シェアの奪い合いを起こさずに新規出店することが難しくなっている。短期的には、職域や駅構内などこれまで出せていなかった特殊な商圏への出店を後押ししたい。そうした店舗への提供を進めつつ、5~10年後には既存店舗の運営方法を変えていくこともしていきたい」と語る。 今後自動化したい業務について、西郷氏は「レジ業務の次に店舗スタッフの稼働が必要な業務は補充。簡単ではないが、補充業務を自動化する仕組みを作れないかと考えている」と述べる。 しかし、ウォークスルー型店舗の先駆けである米Amazonの「Amazon Go」の出店は順調とは言い切れない。Amazonは2023年3月時点で、同社の自動決済技術「Just Walk Out」を活用したAmazon Goを8店舗閉店すると報道された。 これについて新原氏は、Amazonが2024年4月に「Just Walk Outを活用したサードパーティー店舗の開業を加速し、2024年は店舗数を倍以上にする」という声明を出したことを紹介。声明によると、同技術を導入した店舗は空港やスポーツスタジアムなど140以上に上るという。 新原氏は「普及で重要となるのは、どのような場所に出店するかだと思う。大学キャンパスやスポーツスタジアムなど、まずは特定の場所で出店を進めることが重要なのではないか」と見解を述べる。 無人/省人化店舗では、年齢確認が必要な酒やタバコの販売も課題となる。これに対し、同氏は「今後出店を図る商圏では、年齢確認が必要な商品の販売も求められる。そうした商品の販売を行う仕組みをテクノロジーで実現するとともに、ルールが十分に整備されていない中、さまざまな事業者に働きかけ、法律を順守しながらお客さまと共にルールを新しく作っていきたい」と展望を語る。 Catch&Goの導入店舗数について、NTTデータは今後約2年間で100店舗の達成を目指している。「既存顧客である大手の小売企業さまと一緒に出店を進めるとともに、顧客企業の数も増やしていきたい」(新原氏)