【独占】ロッテ福田秀平が語ったFA移籍の真実と古巣ソフトB甲斐キャノンとの勝負の行方「だから僕は前へ出る」
福田の守備も超攻撃的だ。捕れるか捕れないかの打球に、いちかばちかの勝負をかけてくる。チームの危機をそのスリリングなファインプレーで何度も救ってきた。 そこにも福田流の哲学がある。 「ピッチャーが打ち取ったと感じた打球はすべて捕りたいんです。特に前の打球は全部捕りにいきます。捕りにいって捕れなければ体に当てて前に落とす。その練習はしています。後ろに逸らすと二塁打、三塁打になりますが、ピッチャーからすれば勝負に行かなくてシングルヒットにされるのが一番辛いんです。だから基本、全部攻めます」 攻める守備には、ケガのリスクを伴う。実際、福田のプロ13年間には、壮絶ともいえるケガの履歴が残る。脱臼、骨折……大きな手術は3度も経験した。人間の体には、脳が自動的に危険を察知して、体を制御しようとする装置があるとされる。福田も、実際、「体が動かなくなる」という体験をしている。それでも勇気を失わない。 ついこの前まで、座右の銘は「前へ出る姿勢」。 「ケガを怖がっていたら野球はできません。ダイビングをしてケガをしたら仕方がないと思う。状況判断をしっかりとして勝負のときはダイビングにいく覚悟はできている。僕がケガをすることより、チームが負けること、ピッチャーに負けがつくことの方が痛い。自分の人生もあるが、その人たちの人生も応援していただくファンの人生も背負っている」 実は、入団1、2年のころ、ファームで、こんな事件があった。あるピッチャーが打ち取った打球に対して、福田が勝負にいかず、安全策を取ったためにポテンヒットとなり負けがついた。試合後、そのピッチャーに呼びだされた。 「俺の人生がかかってんだぞ」 1、2軍を行き来していた当落線上のピッチャーにとって、1本のヒットによる勝ち負けは大きな意味を持つ。その1本が戦力外につながることだってある。福田の胸の奥に今なお、こびりついている重たいプロの言葉だ。 「その言葉が心に残っているんです。ずっと忘れない。僕のワンプレーに、そのピッチャーの人生、その人の家族の人生がかかっている。ケガをしたくないから勝負できないでは済まされない。人間がやることだからエラーは仕方ないんです。でも、そのエラーの内容が、どういうものだったのかが大事。一生懸命練習していたのか、その姿勢も問われる」 これが福田のプロとしてのプレー哲学の原点である。 だから「前へ出る」――。(後編へ続く) (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)