図書館の人が見せてくれた一冊の画集が少女を変えた……秋に読みたい本屋や図書館に行きたくなる本
本屋や図書館に行きたくなる本
読書にふさわしい季節になった。先月始まった「秋の読書推進月間」でもあり、本屋や図書館に足を運ぶ子どもも増えているのでは。こんな本屋さんがあれば。そんな図書館だったら行きたい。素敵な出会いが待っている場所を、本の中に探してみた。(近藤孝)
小手鞠るいさんの絵本『まほうの絵本屋さん いずみとみずうみ』(絵・たかすかずみ、出版ワークス)の主人公は絵本作家の若林湖。子どもの頃に戻ったかのように、心の中に住んでいる泉君と会話をし、将来作家になる夢や物語を書いたことなどを伝えている。
いつものように空想の世界で遊んでいた湖は、ひみつの森に入り込み、まほうの絵本屋さんへ。店員に薦められて手にした絵本は「いずみとみずうみ」。幼い2人が冒険旅行に出かけるお話を、湖は夢中になって読んでいく。実際に会うことはかなわない湖と泉君を、絵本が引き合わせる。そのようなかけがえのない1冊が見つかる本屋が、実際にあるといい。
米国の絵本作家、パトリシア・ポラッコさんの自伝的絵本『あこがれの図書館』(訳・福本友美子、さ・え・ら書房)は、図書館が本だけでなく、素晴らしい人との出会いの場にもなることを教えてくれる。
小学生のパトリシアは、引っ越し先の町で、図書館通いを始める。お気に入りは貸し出し禁止の画集。熱心に画集を眺めている少女に、図書館員のおばさんが、特別室にしまってあった貴重な本を見せてくれる。鳥類の絵で知られる画家、オーデュボンの画集で、パトリシアは絵本作家への道を進むきっかけをつかむ。
ポラッコさんはあとがきに、「図書館の本の中から、美しいものをおしみなく見せてくれたあのたったひとつの行いが、わたしの芸術家としての、そして著者、アマチュア鳥類学者としての将来を保証してくれた」と賛辞を書いている。図書館勤務の経験がある福本さんもあとがきで、「図書館員としてのこの誠実な仕事ぶりに、大きな拍手を送りたい」とつづっている。