アニメ「めぐみ」、視聴や研修など「4つの100」目標に 福岡県行橋市が拉致問題啓発
福岡県行橋市が、北朝鮮による日本人拉致被害者の救出を目指す世論喚起を強化している。北朝鮮人権侵害問題啓発週間(12月10日~16日)に合わせ、市幹部職員に拉致問題啓発に向けたドキュメンタリーアニメ「めぐみ」の視聴100%を達成する目標を掲げた。同市は令和2年度以降、同週間で幹部職員の「ブルーリボンバッジ」着用率、市立小中学校で「めぐみ」の上映率、公共施設で拉致啓発ポスターの掲示率で、それぞれ100%を達成し続けている。同市は「4つの100」と銘打って、ほかの自治体への波及も目指している。 【写真】家族旅行で記念撮影した横田めぐみさんと双子の弟、拓也さんと哲也さん 「幹部職員に対し、研修の一環でアニメ『めぐみ』の視聴で感想含むアンケートを実施する。『4つ目の100』として取り組んでいく」 10日の市議会で、市総務部長はこう語った。超党派の地方議員らでつくる「ブルーリボンを守る議員の会」の会長も務める小坪慎也市議の質問に答弁した。 市は2年度以降、同週間の期間中、市議会に出入りする全ての幹部職員が拉致被害者の救出に向けた意思表示である「ブルーリボンバッジ」を着用している。また、少なくとも同年度には小中学校含むすべての公共施設で啓発ポスターを掲示し、平成30年度以降、拉致被害者の横田めぐみさん(60)=拉致当時(13)=を題材にしたドキュメンタリーアニメ「めぐみ」を小学校6年と中学校3年の全クラスで上映する。 ■「家族の思い、いかばかりか」 拉致問題を巡っては、北朝鮮人権侵害対処法で地方自治体に世論啓発を図る努力義務が課せられている。とはいえ、拉致被害者「救う会」の西岡力会長も行橋市の拉致啓発に関する取り組みは先駆的だといい、「ほかの自治体にも横展開してほしい」と語る。 同市を巡っては、29年、当時の教育長がアニメ「めぐみ」の学校での上映について「(在日韓国・朝鮮人への)いじめが起こる懸念を排除できない」という趣旨の答弁を行い、批判を浴びて撤回した経緯がある。 小坪氏は当時を振り返って「拉致被害者の方々に非常に申し訳なく、悔しい思いだった。こうした思いが少なくない職員に共有できていたからこそ、その後の『V字回復』に至ったのではないか」と述べる。
米谷友宏副市長は、10日の市議会で、横田めぐみさんと同世代だと発言した上で、「親御さんと一緒に住むことができない状況を振り返ると、本人や家族の思いはいかばかりかと痛感している」と述べた。小坪氏も「拉致に関する質問をやめることができる日が来て、全ての被害者が奪還されることを祈っている」と語った。(奥原慎平)