【米大統領選にみるリーダーに必要な6つの資質】ドナルド・トランプとカマラ・ハリスを徹底比較
政治リテラシーとは、ただ知識を詰め込むことではない。情報を批判的に分析する能力や、確固たる自己の価値観や信念を形成し、それに基づいて適切な判断を下す能力である。 ハリスは法律家や上院議員としての経験から、充分な知識を培っているものの、確固たる主義主張を持たない、あるいは「見せない」ようにしている節がある。専門家や法律家は、客観性や中立性を重視するあまり、自らの主義主張を明確にすることを避ける場合がある。その点でハリスは、長年の法律家としての経験から、偏った印象を与える発言を避ける傾向を持つ。これらは法律の世界で培われた手堅いストラテジーだと考えられるが、彼女が政治家として更なる高みに登るためには、政治家として何を成し遂げるのかを明らかにし、難しい判断を迫られたときの拠り所となる自らの軸を確立しなければならないだろう。
【リーダーに必要な資質6】自己信頼
リーダーにとって「自己信頼能力」は大切な資質である。 過去の政治指導者たちが示したように、自己を信じる力は、政治的な決断を下す上での根幹をなすものである。自己信頼が強い指導者は、困難な状況に直面した際にも、自分の信念を貫き通し、周囲を導いていくことができる。対照的に自己信頼がなければ、リーダーは他者の意見や外部の圧力に流され、揺らいでしまう危険性がある。 かつてアメリカで第8代大統領を務めたマーティン・ヴァン・ビューレンは、自己信頼不足が原因で再選に失敗したと言われている。ビューレンは、1837年の経済恐慌を乗り越えようとしたものの、しばしば他者の意見に流され、明確な決断を下すことができず、その結果、周囲の支持を失った。他者の意見に流されることなく、自己の信念を持ち続けることができれば、もっと強いリーダーシップを発揮できた可能性は高い。 一方、過信によって失敗した政治家の事例は枚挙にいとまがない。例えばイラク戦争で失敗したジョージ・W・ブッシュ、無計画な軍事戦略によりフランス軍に大量の死者を出したナポレオン・ボナパルトなど、過信が原因で失敗した政治家は、しばしば自らの能力を過大評価して現実的なリスクを軽視した結果、大きな失敗を招いてきた。過信による決断が破滅的な結果を招いた歴史は、重要な教訓である。