3Dプリンター住宅、能登半島地震の被災者が低価格・早く生活再建できる選択肢に。水回り完備の50平米1LDKを550万円で提供、体験施設も完成 珠洲市「serendix50」
富山湾が見渡せるベッドルーム。シングルベッドを2つ置ける広さ。
この家の珠洲市での量産には、もう1~2年の開発期間が必要とのこと。今すぐの活用は難しいが、全国からの問い合わせは1万件を超えているそう(2024年9月時点)で、その半数以上が50代以上。多額の費用をかけて自宅を再建することにためらいはあっても、比較的安価であるため新しい住まいの選択肢として検討している人が多いのだろう。
3Dプリンター住宅が被災者の希望になるように
珠洲市に「serendix50」を建てたことについて、セレンディクス社のCo-founder(共同創業者)である飯田國大さんは、想いをこう語った。 「震災の被害を受けて、なぜ能登地方で住宅の再建が進んでいないかというと、それだけの理由があるんです。まずは、木材の価格が高騰しているということ。木造で新築となれば、数千万円の建築費が想定されます。それに加えて、主要な道路が寸断されたため資材の輸送が困難なこと。緊急の復旧工事が行われたりしましたが、移動には通常の倍以上の時間がかかってしまう。 こうした状況を受けて、施工前の段階から、珠洲市で住宅を建てるには苦労するだろうと覚悟していました。でも、『ありえない、できるはずがない』そう言われていた事を実現する。それが私たちの使命ですから、お声がけいただいた施主様の蔵さんの想いを受け取り、着工へ踏み出しました」
「当初は48時間、つまり1週間程度の工期を目指していましたが、それが2週間に延びたのには理由があるんです。屋根のパーツを輸送している最中に、パーツが破損してしまって。まだ完全に復旧しきっていない道路ですので、段差による衝撃を受けてしまったようで。そのため、屋根はつくり直し。 ちなみに、破損したパーツは屋根に使うのではなく、ベンチに姿を変えて設置することにしました。今も建物の前に置いているので、ぜひ現地に行く機会があれば見ていただきたいです」 地元の人たちの反応はというと、期待の声が続々と寄せられているそう。 「皆さん、将来の不安が軽減したと言っておられますね。それまでは、家を建て直すのに数千万円かかるとされていたものが、3Dプリンターの家は1棟1000万円以下で済む。それに一時的な避難先として、コンテナハウスなどの仮設住宅は有効だと思いますが、長期的な住まいとしては考えづらいですよね。 私たちの役割は、被災して家を失った人たちにとっての生活再建の光となること。今すぐに、能登地方で量産するのは難しいのですが、もう数年すれば交通インフラも復旧して、よりスピーディーに、スムーズに、新しい住まいをご提供できる環境が構築できるはずです。だから、どうか希望を捨てないでほしい」 3Dプリンターで建てる家が、当たり前になったとしたら。それまで、さまざまな事情で住まいづくりを諦めていた人も、夢や未来がひろがるだろう。それが現実となる日は近づいてきているのかもしれない。
SUUMOジャーナル 編集部
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