3Dプリンター住宅、能登半島地震の被災者が低価格・早く生活再建できる選択肢に。水回り完備の50平米1LDKを550万円で提供、体験施設も完成 珠洲市「serendix50」
低価格・速い・快適・安心。高齢者からの問い合わせが殺到
「serendix50」は、50平米1LDKの平屋建てで、2人暮らしを想定して設計されている。その特徴は何といっても、低コスト。水回りの設備込みで、550万円(税別)で建てられるというから驚きだ。さらに、愛知県小牧市で建設された「serendix50」のモデルハウスは、44時間30分で施工が完了。珠洲市での工事は、道路状況など交通インフラの影響を受け、最短時間での施工は実現できなかったものの、2週間程度で家が建った。通常、新築住宅は数カ月間要することを考えれば、圧倒的なスピードだ。
施工の手順はこうだ。石川県外に設置している3Dプリンターで、設計データに基づいてパーツを“印刷”する。パーツを珠洲市まで輸送し、協力会社のサポートのもと、現地でパーツを組み立てる。その後、内装工事を行い、竣工。ちなみにパーツは専用の特殊なモルタルでできており、13個の壁パーツなど大小の部材を組み合わせる。建設時にパーツの内部空間にコンクリートを注入して構造部材としており、その厚さは30cm以上。やわらかい質感でもこもこしているように見えるが、触ると重厚感があり、外部環境からしっかりと守ってくれる安心感がある。さらに今回は新しい試みとして、基礎も3Dプリンターでつくったそうだ。
パーツの組み立ても比較的簡単。おもちゃのブロックを積み上げるようにしてつくり上げるため、プロの施工事業者であれば3Dプリンター住宅の知識や経験がなくても、施工可能だそうだ。工期も短いことから、人材不足が懸念されている工事の現場監督者を長期間にわたって拘束する必要もなく、つくり手側の課題もクリアできる。
気になるのは、建物の耐久性や快適性。能登地方は積雪地帯であり、断熱性能も住まいには欠かせない条件だ。「serendix50」は鉄筋コンクリート造。現在の建築基準法に準拠し、建築確認済証を取得した高い機能性を持たせている。さらに壁の厚みも30cm以上あるなど高い耐震性を備え、今回の震災で大きく被害を受けた旧耐震の家屋に比べると安心して住むことができる。防音性も長けており、例えば外で工事をしていても「serendix50」の建物内に入れば、ほとんど音が気にならない。断熱性能はというと、これも壁が魔法瓶のように二重構造になっているため、夏はヒンヤリ涼しく、冬は冷たい外気からしっかりと守ってくれる。日本よりも厳しいヨーロッパの断熱基準をクリアしているというのも信頼できるポイントだ。
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