【独自解説】ロシア軍機が日本の領空を侵犯 航空自衛隊が初めて「フレア」による警告実施 領空侵犯機にできるのは「退去」と「着陸」 今後自衛隊法第84条はどうなる?武器使用の明記で変わる各国の対応
今回のような「撃墜することを日本はできないのか」というのは国会でもたびたび問題になってきました。「他国の場合には問答無用なので、他国は領空侵犯を未然に防いでいる」というような主張があるわけです。
領空侵犯について法律に書かれているのは自衛隊法の第84条です。ここで明文化されているのは、「退去してもらいなさい」と、もし入ってきた飛行機が言うことを聞かなかったら「着陸をさせなさい」ということになっています。そして、どの武器を使っていいなどは一切書かれていません。
では、「何もできないのか」というとそうではありません。戦闘機は2機1組で飛ぶのですが、1機に対して相手が攻撃してきた場合は、もう1機が援護するために相手に攻撃をすることができます。上官の判断を仰いでいる余裕がない緊急避難、分かりやすくいうと“正当防衛”で撃っていいという解釈をしています。
もう一つは、日本の上空に入って来た飛行機で爆撃機など、爆弾を落とす準備をしていて、下に日本国民いる、つまり国民に対して被害を加える準備をしている場合は法律に明文化されてなくても武器を使用するという解釈がされています。 しかし、正当防衛というのはなかなか立証も難しいです。相手側は違うというかもしれません。2機1組ならば、1機が証人になるという意味合いもありますし、もう1機に対してバックアップをするという意味もあるわけです。
■実際に領空侵犯機を撃墜すると後始末が大変 トルコとロシアの場合は…
では、「世界の常識は撃墜することだ」といいますが、実際に撃墜してしまった場合、これは国対国の問題になって、国と国の力がもろにぶつかり合うことになり、後始末がもう大変になります。それが2015年のトルコとロシアの間でありました。 この2国は、両方とも軍事大国です。ロシアは圧倒的な大国で核保有国です。トルコ側の主張は、「ロシアの爆撃機が国境を越えて入ってきた。10回警告したけど言うこと聞かなかった」というものです。ロシア側は「いやいやそんなことはない。もうあっという間に落とされた」と主張して、お互い相手を非難し合いました。 しかし、こういう時にロシアは大国の力を使います。トルコはロシアからエネルギーも含めていろんな貿易をしていました。そこでロシアは経済制裁をおこないました。エネルギーなどでトルコはその喉元を締め上げられました。結局、7ヶ月後にこの誇り高いトルコ・エルドアン大統領がロシアに謝罪して、領空侵犯した方のロシアが「そんなに謝るんだったら許してやるよ」というような感じになって、しこりが残っていると言われています。
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