【デーブ大久保コラム】選手を批判しない人格者の新井監督。広島伝統のしつこい采配も受け継いでいます
【デーブ大久保 さあ、話しましょう!】 昨年、巨人ベンチから新人監督の采配を見ていました。プロでの一、二軍を含めた監督とコーチ経験がない中での監督就任でしたので、苦労するかもな、というのが最初の考えでした。ここまで書くともうお分かりですね、広島の新井貴浩監督のことです。 【選手データ】新井貴浩 プロフィール・通算成績 しかし、昨年は2位に入り、今年は優勝争いをしています。昨年は新井監督の隣に常にピタリと寄り添っていた藤井彰人ヘッドコーチが、本当によく動き回っていたのが印象的です。ヘッドコーチ職は初めてでしたが、バッテリーコーチとして多くの経験があります。コーチ時代に感じていたヘッドコーチの役割を自分なりに理解し、そして実行していったのだと思います。昨年は巨人ベンチから見ていてまとまりのあるコーチ陣だなと感じていました。 2人は同級生ですよね。元チームメートですし、本当に腹を割って野球観をお互いに話ができるのではないでしょうか。特に2人きりのときにはそういう意見交換ができているのではないかと思います。監督が気兼ねなくヘッドに自分の意思が伝えられる状況ができ、それをうまくチームに落とし込めるヘッドがいる。それがチームにいい流れを生んでいるのではと思うのです。 それと同時に、新井監督の度量の大きさが素晴らしい。人の話をしっかり聞ける人間です。それはやはり下位入団で、苦労しながらスターになっていったという現役時代があったからではないでしょうか。入団したときから見ていますが、守備も打撃も……という感じでしたので、失敗もたくさんしたと思います。本当に努力をしたのだろうと思います。 そういう失敗から多くのことを学んでスターまで登り詰めた男だからこそ、選手たちが失敗しても、インタビューのコメントでエラーをした選手、打ち込まれた投手を叱責しないのでしょう。そのコメントを読んだり、聞いたりしたときの選手というのは、非常に心に響くものがありますし、逆に深い反省の念に駆られるものです。「よおし、次は絶対に取り返す!」という感情が生まれるのです。その意味では現代の選手たちに合った監督なのではないでしょうか。彼を見ているとメジャーの監督のような雰囲気を持っていますし、明るい人間ですのでスポークスマンのような役割も果たしています。 ただ、それだけではないですよ。やはり広島の伝統をしっかりと受け継いだ采配をします。しつこくて粘り強い采配です。昨年も「ここでもまだそのサインを出すのか」と思う場面が結構ありました。 そしてチーム打率は低いですが、相手ベンチから見たら本当に嫌な……しつこく食らいついてくる打者ばかりです。秋山翔吾、小園海斗、菊池涼介、野間峻祥、ほかの打者も「ここで何かしてきそう」と思わせる選手ばかり。こういう心のプレッシャーが後半の勝負所で生きてきます。今年の広島はその部分が完成されていますよね。さあ本当の勝負となる9月が楽しみです。
週刊ベースボール