監督交代、主力流出、残留争いも…浦和の強化手腕に課題、積み上げは「果たされているのか」【コラム】
監督交代も起きた今季の浦和、リーグ13位でフィニッシュ
浦和レッズは12月8日、J1リーグ最終節のアルビレックス新潟戦を0-0で引き分け、13位で今季を終えた。監督交代を挟み、主力の流出も相次いだ。それでも来季にはクラブ・ワールドカップ(W杯)で世界の強豪と戦う重大イベントもある。マチェイ・スコルジャ監督は「来季にやろうとしているサッカーを考えれば、それにあった特徴の選手を獲得しなければいけない」とも話した。 【実際の様子】スタジアムに居残りした浦和サポーターが掲げた「弱くて魅力ない」の横断幕 スコルジャ監督はポーランドでは名将として知られ、ヴィスラ・クラクフ時代にはペップ・グアルディオラ監督が率いるFCバルセロナを破ったことで注目を集めた。昨季に浦和の監督に就任すると、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝でサウジアラビアの強豪アル・ヒラルと対戦することを念頭に守備の整備からスタート。その成果が出てACLを制してJ1最少失点も記録したが、得点力不足には悩まされた。その象徴的な結果が8回のスコアレスドローだった。 その指揮官は家庭の事情もあり1年で退任。今季に向けペア・マティアス・ヘグモ監督が就任した。モデルチェンジの色合いが濃くなったプレシーズン、ウイング色の強い選手も多く補強して攻撃的な要素の強いチームに変化していった。選手の個人戦術に踏み込む指導も多く、その結果として変化の時期を指し示すように負傷者も多く出て安定感を欠いたが得点力は伸びた。8月末に浦和はヘグモ監督の解任を決断してスコルジャ監督が復帰するが、ヘグモ監督の指揮下で浦和は26試合を終え勝ち点35、40得点35失点だった。
来季編成は「メンバーが定まってきたらしっかり話したい」
暫定監督体制を1試合挟み、雷雨によるハーフタイムでの中止があったことで前半をヘグモ監督、後半をスコルジャ監督が率いた異例の川崎フロンターレ戦もあったが、スコルジャ監督が指揮した10試合で3勝2分5敗の勝ち点11、6得点7失点の成績だった。前述の2試合がいずれも引き分けだった結果、最終成績は勝ち点48、49得点45失点で13位に終わった。監督交代によって得点も失点も大幅に減ったのは明らかで、10試合のうち6試合が無得点。勝利が3、引き分けが1という勝ち点制度のリーグ戦を戦ううえで、無得点の試合が多ければ厳しいのは明らかだった。 スコルジャ監督は新潟戦後、その改善策について「よりしっかりとトレーニングを積むことだ。今日の試合は、現在の私たちを象徴するようなものだった。今回の来日してからの3か月はクレイジーと言えるような日々だった。例えばサンフレッチェ広島戦(3-0)のように大きなプレッシャーの中で良い試合を見せたこともあった。そして、いい方向に進んでいると感じた時に非常に貧相な試合をしたこともあった。あらゆる側面で安定性がないというのが、私にとってのチャレンジだった」と話す。 そのうえで「まず、編成のところで言えば来シーズンのメンバーが定まってきたらしっかり話したい」とも言葉にした。今季のスタートに向けFW前田直輝やFW松尾佑介、ヘグモ監督との関わりもあった元スウェーデン代表MFサミュエル・グスタフソンや、ノルウェー代表FWオラ・ソルバッケンも獲得した。しかし、6月末の時点で主将だったDF酒井宏樹、元デンマーク代表DFアレクサンダー・ショルツ、MF岩尾憲が退団し、半年間の期限付き移籍だったソルバッケンを残すこともかなわず、新主将に任命されたMF伊藤敦樹も8月に海外移籍した。 ヘグモ監督の体制で最も勝ち点が伸びなかった7月から8月にかけては、シーズン当初からの負傷者続出に加えて、まさにこの主力大量退団の直後だった。一方で浦和は強化部にあたるフットボール本部で強化責任者を務めていた西野努氏が4月に退任し、OBの堀之内聖氏が内部昇格した。就任したばかりでこの事態に直面するなか、夏の登録ウインドーの補強は同じJ1のサガン鳥栖からDF長沼洋一、欧州から逆輸入の若手FW二田理央とMF本間至恩、9月に入ってからMF原口元気との契約になった。 実績ある選手の退団との兼ね合いはアンバランスだったが、堀之内氏は「私の中での補強は、今いる選手たちをさらに成長させる、それも補強の1つだと思っています」という苦しい言葉を残した。実際には「選手が抜けたところに対する我々の移籍での補強、という部分には、まだまだ課題があることも認識しています」と話し、ヘグモ監督とスコルジャ監督を合わせ、ここ2シーズンで4回も「次の移籍市場が重要だ」というコメントを残すに至った。