<インドその5~ バニヤンの下の少年> フォト・ジャーナル 高橋邦典
田舎町を歩いていると、バニヤンの木の下で勉強にいそしむ少年に出くわした。道路には車やバイクが忙しく走り抜け、その合間を牛やヤギが行き交う。まわりには飯屋台が多いので、騒々しいし、とても勉強しやすい環境とはいえない。 カメラを向けると少年はこちらを一瞥(いちべつ)しただけで、特に気に留める様子もなく、机の上に開いたノートにまた視線を落とした。その真剣な眼差しは、声をかけて邪魔をするのも憚られるほどだ。自分の部屋どころか、まともに勉強する環境に恵まれないこんな子供たちの姿は、インドでは珍しくはない。 この国で暮らしていると、時々ものすごく頭がきれて、知性溢れる人に出会って舌をまくことがある。木の下の少年のように、こんな逆境だからこそ、それを乗り越え頭角をあらわす人間というのは、飛び抜けた人材になるのかもしれない……。10年後の彼にまた会ってみたいな、ふと思った。 (2014年11月撮影) Copyright (C) Kuni Takahashi. All Rights Reserved.