「11日間眠らない」に挑んだ高校生の身に起きたコトとは 極限まで眠らないとどんな影響が出るのか【海外】
睡眠時間を削ると体調が悪くなったり集中力が下がり、食事と同じで睡眠をとらないことは非常に危険だということは誰もが知っている。 【写真を見る】世界で40家族 「世界一、恐ろしい“不眠の病”」とは
ところが、医療・医学の最前線の取材を重ねてきたノンフィクション・ライターであるビル・ブライソンの著書『人体大全』(桐谷知未訳)によれば、「11日間眠らない」に挑んだ高校生がいたという。 少年は不眠の世界記録を打ちたてたが“何の代償もなしに”というわけにはいかなかったようである。同書をもとに見てみよう。 ※本記事は『人体大全』の一部を抜粋・再編集し、全2回にわたってお届けする。【本記事は第1回】 ***
人間が意図的に眠らずに過ごした最長記録は、1963年12月、サンディエゴの17歳の高校生ランディー・ガードナーが、学校の科学研究として挑んだときの264.4時間(11日と24分)だ。 最初の2日ほどは比較的たやすかったが、徐々にいらいらして混乱し、ついにはぼんやりした幻覚にすっかりとらわれたかのようになった。挑戦を終えると、ガードナーはベッドに倒れ込んで14時間眠った。 「目が覚めたとき、頭がぼうっとしていたけど、ふつうの人がぼうっとするのとたいして変わらなかったよ」。ガードナーは、2017年にナショナル・パブリック・ラジオの司会者に語った。睡眠パターンは正常に戻り、目立った悪影響は何もなかったという。 しかし、のちにひどい不眠症を経験し、それを若気の至りの「因果応報」と考えている。
残酷すぎて二度と行なわれそうにない実験
ヒトは人生の3分の1を睡眠に費やしている。わたし(※『人体大全』の著者)は、これを書いている時点で66歳だ。人生における睡眠時間を合計すれば、21世紀になってからずっと眠っていたことになる。 体のどこだろうと、睡眠の恩恵を受けない部分、不眠の悪影響を受けない部分はひとつもない。長期にわたって睡眠を奪われれば死んでしまう──が、具体的に睡眠不足の何が原因で死ぬのかも、やはり謎だ。 1989年、残酷すぎて二度と行なわれそうにない実験が行なわれた。シカゴ大学の研究者たちが、ラットを死ぬまで眠らせずにいたところ、11日から32日のあいだで完全に消耗して死亡した。剖検(ぼうけん)では、ラットに死亡の原因といえる異常は見つからなかった。ただ、体が動くのをやめてしまうのだ。