「何を言うか」ではなく「誰が言うか」 中間管理職の悩みを救う、ツッコミの達人・春風亭昇也の「場の主導権を握る会話術」
江戸時代から続く歴史があり、人間力や教養が高まるとビジネスリーダーから好まれている落語。その特性とビジネススキルを掛け合わせ、落語を聴くようにすんなり理解できる「落語家に学ぶ仕事のヒント」。 「職場で生かせるビジネスハック」「スキルアップのヒント」「キャリアの視座を高めるコツ」をさまざまな人気落語家へのインタビューから探ります。 今回登場するのは、春風亭昇也さん。 お笑い芸人から落語家に転身した昇也さんの武器の一つである、漫才で培った「ツッコミ力」について聞いていきます。 「後輩が先輩や師匠にツッコむのは失礼」な落語界で、「昇也なら仕方ない」という独自のポジションを開拓してきた昇也さん。怒りを買わず、失礼にもならないツッコミの神髄とは?
【春風亭昇也 SHOYA SHUNPUTEI】 落語家 1982年生まれ、千葉県野田市出身。 お笑い芸人としての活動を経て、2008年春風亭昇太に入門。2013年二ツ目昇進。2022年真打昇進。 「第77回文化庁芸術祭賞」優秀賞、「令和5年度花形演芸大賞」金賞など、受賞多数。 落語芸術協会所属の落語家・講談師11人で結成された「成金」のメンバー。 趣味は御朱印集め。
「こういうキャラだから」と思わせたもん勝ち
実は、落語家は人からのツッコミに弱い生き物です。 というのも、落語家の芸は会話をしているように見えて、実は自己完結なんですね。「語るプロ」であって、「会話のプロ」ではないんです。 落語界自体も、「後輩が先輩にツッコむなんてあり得ない」というのが基本的なしきたりでした。 でも僕は元漫才師だから、「先輩がボケたらツッコミを入れるもの」と教わってきた。 先輩がボケているのにツッコまないほうが失礼という感覚があるから、ペーペーの時代、楽屋入り初日から先輩にツッコんでいたんです。そもそも、ボケをスルーするなんて気持ち悪いじゃないですか。
僕としては礼儀のつもりだったけど、周りからしたら失礼なこと。そういう空気はあったし、生意気だと言われたこともあったけど、「ちゃんと笑いを取っているから関係ない」と気にせずツッコみ続けたわけです。 そしたら3カ月、半年と経つにつれて、楽屋の人たちがボケた瞬間に僕の顔を見るようになった。「勝った!」と思いましたね。 その後、「成金」という落語家と講談師11人で構成されたユニットを組んだときも、一番後輩の僕が一番えらそうに暴言を吐いたりタメ口でしゃべったりするのを、一番先輩の小痴楽さんが「面白い」と言って受け入れてくれた。 その結果、成金はフラットな組織になっていきました。落語家がユニットを組むとトップダウンになりがちだけど、成金では先輩後輩の垣根を越えて、みんなが意見を言えるようになったと思います。これはね、僕が生意気だったおかげですよ。 つまり、「昇也はこういうやつ」というキャラクターを浸透させちゃえば、強いんです。