人類が100年間解けない謎がそこにある…「世界で最も不可解な本」にビッシリ描かれた未知の文字、奇妙な挿絵
■未知の人工言語か暗号か 拡大図(図2)からは、アルファベットや数字に似た独特の文字がよくわかるだろう。これをヴォイニッチ文字と呼ぶ。 見たところ一般的なヨーロッパ言語のように単語から構成され、ページの右や下に余白があることからすると、左から右に書かれているらしい。句読点はなく、文字列の繰り返しが非常に多い。 プレスコット・カリアは、植物の絵があるセクションでは2種類、写本全体では12種類の異なる筆跡が確認できるとし、複数の写字生によって書かれた可能性を指摘した。 ヴォイニッチ文字で書かれた他の資料は発見されていないので、これが世界で唯一の資料だということになる。不思議な文字ではあるものの、眺めていると、なんとか解読できそうな気がしてこないだろうか。 これまでさまざまな言語との関係が指摘され、研究されているものの、明確な対応付けはことごとく失敗している。ただし、未知の人工言語や暗号であるならば、それも不思議とはいえない。 ■読めそうで読めない 読めそうでいて読めないところが、ヴォイニッチ写本の最大の魅力だろう。 この文字で書かれた唯一の資料であることは解読を困難にするが、これだけ挿絵があれば対応する文字を見つけられるのではないか、そこそこ文字数があるのだから何らかの規則性を見出すことができるのではないか、という気がしてくる。 多数の挿絵は手がかりとなりそうだが、これまで実際の植物などとの同定は成功していない。ヒマワリ(図3)や唐辛子など、アメリカ大陸原産の植物が描かれているという説もあるが、一般的な合意は必ずしも得られていない。 研究の素材が豊富な点もチャレンジ意欲をそそる。所蔵館からは、全ページのデジタル画像に加え、後述の羊皮紙やインクの成分分析や炭素年代測定といった科学的調査の結果が公開されており、誰でも自由にダウンロードして検討できる。さらに、画像だけでなく、折りたたまれたページも再現してある実物大の写真集(ファクシミリ版)が紙媒体で出版されており、そこには最新の研究動向や成分分析の結果を伝える論考も収められている。