早期離職がもたらす「6つの弊害」と若手社員の退職を防ぐ「We感覚」とは?
筆者は、これを「We感覚」と呼んでいる。「We感覚」を持っている若手社員は、ちょっとやそっとのことでは離職しなくなる。なぜなら、こうした若手社員は会社へのコミットメントが高まっており、もはや退職することは自分が大切にしてきたことを否定することにつながると感じるようになっているからだ。 もちろん、原理的には、個人と会社は別人格である以上、個人と会社が「一体化」することはない。しかし、自社のことを「私たちは」と表現するようになった時、「組織人格が個人人格に入り込んだ状態」になっているのは間違いない。この感覚は、若手社員においても、学生時代の組織体験の中で経験した人も多いだろう。筆者自身も高校3年間野球に打ち込んだが、1年生の時は「うちのチームは」という感覚だったが、3年生になった時は「俺たちは」という感覚へと変化した。組織人格として役割を体現することが、個人人格の喜びとつながっている感覚になった。 若手社員の離職を防止し、定着を図りたいのであれば、「一体化」をゴールにオンボーディングを行うべきだと筆者は考える。「戦力化できたから、もう大丈夫だろう」と思っていると、ある日突然、予期せぬ退職宣言を受けることになる。若手社員の悲しい退職を防ぐためには、オンボーディングで「We感覚」を育むことが重要だ。 ただし、若手社員の「We感覚」を育むのは長期戦になる。筆者の経験上、自然に「私たちは」という言葉が出るようになるまで、5~10年くらいかかる。個人と会社は、1つのきっかけである日突然一体化するわけではなく、長い時間をかけて一体化が進み、徐々に「We感覚」が得られるようになっていくのだ。もちろん、組織の規模や個人の成長スピードによって、その歳月は短くなったり長くなったりするが、半年や1年で「We感覚」が得られることはない。 一般的に、オンボーディングの期間は3カ月から1年程度だとされているが、ゴールを「一体化」に置くのであれば、5~10年という長期間でオンボーディングを設計する必要がある。
小栗 隆志