「モナコでの勢いを還元したい」。中国戦で2発の南野拓実、強靭なマインドで変貌を遂げた姿
まさにポジティブな循環の中にいる
そういった上昇曲線を辿れているのも、3年前の前回最終予選の苦い経験があるからだろう。当時を振り返ってみると、所属するリバプールで出番を得られず、調子が上がらないまま代表に来て、足踏み状態を強いられた。 ポジションが左FWメインだったこともあるが、ゴールから遠い分、持ち前の得点能力を発揮するシーンが減り、本人もジレンマに陥った。信じがたいほどの不振が最終的にカタールW杯でのスタメン落ちにつながったのだ。 失意の2年間を経て、南野の中では「チームで結果を出さなければ何も始まらない」という思いが強まったはず。そこで昨季、原点回帰を図り、心身両面で鍛え直して、完全復活を遂げるに至った。 「リバプールの時は90分を毎週続けてできるトップフィットの身体ではなかったですね。(アドルフ・ヒュッター監督体制の)モナコのトレーニングはきつくて、それにプラスアルファで高強度ランの数字も出せるようにフィジカルコーチと一緒に取り組んできた。それが今の自分にとっての強みでもあると思います」と6月シリーズの時も話していたが、今季も走力、動き出しの速さ、一瞬のキレ、反応の鋭さという部分にはさらに磨きがかかっている印象もある。 フィジカル的に良い状態を維持できれば、メンタル的にも自ずと上向く。今の南野はまさにポジティブな循環の中にいる。3年前の屈辱を糧に、より強靭なマインドができ上がっているのも確かだ。その変貌ぶりを彼自身、そしてチーム全体が中国戦で示したことは、確実に先々につながっていくだろう。 「僕自身はまあ最高じゃないけど、チームの勝利に貢献できて良かったです。今の代表は前回の経験をしてる選手が多いので、みんな試合前に『初戦は絶対に勝点3』と喋ってたし、チームの共通認識としてもあったから、最後までしっかり集中して試合を締めることができたのかなと思います。 でも、次のバーレーンも(オーストラリアに1-0で勝った)結果を見ると、やっぱり侮れない相手。最終予選は何があるか分かんないなっていうのを感じるので、しっかり準備したいです」 背番号8は目を輝かせた。今回フル稼働した分、次戦は控えが濃厚だが、ここ一番で点を取ってくれる頼もしい存在がベンチにいるだけでも、森保監督にとってはポジティブだ。この最終予選で南野がどこまでゴール数を伸ばしていくのか。さらなる前進と前向きな変貌を楽しみに待ちたい。 取材・文●元川悦子(フリーライター)
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