異常事態が進行中 「銀行券ルール」って何?/木暮太一のやさしいニュース解説
こうなると、お金を手にする人が大幅に増えます。売られている商品の総額をはるかに超えて、多額のお金が流通することになります。 そうすると、お金を手にした消費者が、どんどん商品を買いに来ますね。 「お、景気が良くなるね! いいことじゃん!」 たしかに適度のインフレであればいいかもしれません。しかし、度が過ぎると大変なことになります。お客さんがどんどんきますが、商品が足りません。多くのお客さんに「売り切れました」と謝らなければいけなくなります。それは嫌ですね。 そうならないためにお店ができる簡単な解決策がひとつあります。 「それは何??」 値段を上げることです。値段を上げれば、お客さんの数が減るので、また商品量とバランスがとれるようになります。 「ああ、なんだ。よかった」 それがよくないんです。商品の値段が上がってしまうのです。これを「インフレ」といいますね。 もし大量の国債を買うために、日銀が急激にお金を刷ったら、急激にお金が世の中にあふれ、急激なインフレになります。 急激なインフレになれば、これから商品の値段がどんどん上がっていくのと合わせて、お金の価値がどんどん下がっていきます。つまり、せっかくの貯金が紙くずになってしまうのです。そうなると、誰もお金を信用しなくなり、金やダイヤなどの貴金属やモノに変えようとします。 これが行き過ぎると、物々交換の経済に逆戻りしてしまいます。だからインフレはいけないのです。 「……それは、やばいな」 こういうような事態に陥らないために、日銀が独自に設定しているのが“銀行券ルール”です。これは、「日銀の長期国債の保有残高を銀行券(お札)の発行残高以内に抑える」という内容で、要するに、「日銀が買える国債の量に、上限を設ける」というルールです。 このルールを自主設定することで、無尽蔵に国債を買わされることを避けます。政府が「日銀さんよ、景気対策やりたいから、もっと国債買ってくれよ」といっても、「いやいや、政府さん。“銀行券ルール”がありますから無理っす」と言えるのです。