野村證券より凶悪「富士銀行顧客殺し事件」を覚えてますか…相次ぐ不祥事は「巨艦・野村沈没」の予兆なのか
行員のモラルハザードが原因か
2500万円もの債務を負ったOは、F夫妻宅を訪ねると、転勤が決まったと挨拶。そして「最後の親孝行と思って肩を揉ませてください」と声をかけ、肩を揉むふりをして妻を絞殺。その後、異変に気付いた夫も絞殺する。 そして証拠隠滅のため、F夫妻の自宅の放火を試みる。ここも梶原容疑者とまったく同じだが、Oは放火に失敗。逃亡をはかったが、後日犯行を自供したため、逮捕された。 これが一連の「富士銀行行員顧客殺人事件」の全容だが、この事件の背景には、当時の富士銀行全体のモラルハザードがあった、と見る向きもある。 かつて富士銀行といえば、東京都をはじめ大阪市や北九州市などの公金も扱い、バブル経済前までは「日本一立派な都市銀行」と、高い評価を得ていた名門だ。ところが、90年代に入ると、バブルの後遺症から抜け出せず、兆単位の不良債権処理に苦しむように。 その結果、同行では不正融資事件から高齢者相手への詐欺まがいの行為、はては女性関係のトラブルまで様々な不祥事が頻発。関係者によればその数は、10年間で200件以上に及んだという。そしてとうとう98年の事件が起きてしまったというわけだ。
かつての富士銀行とそっくり
なにより当時の富士銀行の行員たちは、規律やノルマに厳しく、自身を「不沈艦大和」と呼ぶほどにプライドが高かったという。ゆえに不祥事が頻発しても、その状況を認め対策を取ることができずにいた。 その結果、業績は低迷。第一勧業銀行、日本興業銀行と合併し、みずほ銀行となる道へ進むほかなくなってしまった。 この富士銀行の興亡史を見ると、野村證券の将来を暗示するかのようだ。 預かり資産150兆円を超え、証券のガリバーの言われる野村。コンプライアンスに敏感となった今でこそ抑えられてはいるが、規律やノルマの厳しさは業界一とされ、まさに富士銀行を彷彿とさせる存在感だ。 そこへきて相次ぐ不祥事と、「富士銀行行員顧客殺人事件」を想起させる、元社員の顧客に対する強盗殺人未遂・放火事件――。 これらを受けて、同社を傘下に持つ野村ホールディングス(HD)の北村巧財務統括責任者は1日の決算記者会見で「私たち一人ひとりが自らの行動に責任を持って仕事に取り組み、社会的役割を全うしたい」と謝罪したが、相次ぐ不祥事、社員のモラルダウンへの具体的な対応策を述べることはなかった。 もしこのまま、野村の「驕り」と「歪み」が変わらなければ、巨艦沈没の可能性も捨てきれない。 【こちらも読む】『ルフィ強盗団「ババアは大声出すのでみぞおち狙って下さい」…狛江強盗事件で幹部が命じたヤバすぎる「犯行指示」』
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