ドバイの建物はなぜ〝奇抜〟?アラビック文字のドーナツ型「世界で最も美しい博物館」デザイナーに聞く理由
最先端都市ザ・ラインの建設
現在、中東ではドバイを猛追するように、サウジアラビアも経済や観光の分野に力を注ぎ始めている。その最たる例が、現在建設が進行中の全長170キロメートル、高さ500メートルにも及ぶ直線型都市「ザ・ライン」だろう。 紅海沿岸から内陸の砂漠地帯にかけて建設される、この人工都市は最大900万人が暮らせるように設計し、高速鉄道により、170キロの距離を20分で移動可能にするスマートシティを目指すという。 「そんなバカな」と後ろ指をさしたくなるだろうが、ドバイの「パーム・ジュメイラ」も計画時点では、「そんなバカな」と言われていたことを忘れてはいけない。 「湾岸諸国やアラブ世界全体で、革新的なデザインを創出する共有の文化的傾向はありませんが、サウジアラビアはUAE同様にリーダーシップによる戦略的な方針があります。 野心的な建築は、彼らの国際的なイメージを再定義する役割を持っています。そして、こうした取り組みは、炭化水素ベースの経済から、持続可能な成長を可能とする経済への移行という部分も反映しています」 事実、現在のサウジアラビアは、ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子指揮のもと、「脱石油」を掲げ、オイルマネーに頼らない国づくりへと舵を切っている。成功例のドバイにならう形で、エコノミックフリーゾーンや政府系ファンドを活用し、さまざまな分野に投資を行っているほどだ。 バイオさんが話すように、野心的な建物は、「国際的なイメージを再定義する役割」を持ち、雇用や観光機会を創出する。我々観光客にとっては、奇抜でユニークな建物という一面に過ぎないかもしれない。しかし、単にユニークなだけではない、多面的な意味が含まれているのである。 「ドバイは、象徴的な建物を作ることで、革新と創造性の文化を育成しています。政府は、次世代の建築家を育成するために、多くの建築プログラムを持つ教育機関に投資をしているほどです。また、ドバイの成長に向けた野心的なビジョンに貢献するため、地元の建築家を支援する意識も高まっています」 ドバイのユニークな建造物は、我々が想像している以上に多方面にインスピレーションを与えるものだったのだ。