「103万円の壁」見直し実現で減税に 国民民主党の要求丸飲みなら20万円超も
年収103万円を超えると所得税が生じる「103万円の壁」を巡り、自民、公明、国民民主の3党は20日、石破茂政権が週内に閣議決定する経済対策に引き上げを明記することで合意した。今後、3党間で具体的な引き上げ額を協議するが、働く人の多くが減税となる見通しだ。国民民主が求める178万円まで非課税枠を引き上げた場合、年収500万円の人なら年間で13万円以上減税になる可能性もある。 【図で解説】複数の「年収の壁」と国民民主党の主張 ■年収500万円なら13万円減税に 現在、所得税は、給与の収入から最低55万円の「給与所得控除」と全納税者が対象となる48万円の「基礎控除」を引いた額を原則として計算している。2つを合わせた103万円を超える年収を得ると所得税が発生することから、「税の壁」とも呼ばれている。国民民主は「手取りを増やす経済政策」を公約に掲げ、東京都の最低賃金の上昇幅を元に、控除上限を178万円にするよう求めている。 要求通りになった場合、納税者の負担はどの程度軽減されるのか。大和総研の試算によると、基礎控除のみを引き上げた場合が最も減税額が大きいという。 試算では、年収が200万円の場合に年間8万2千円▷300万円=11万3000円▷500万円=13万3000円▷600万円=15万2000円▷800万円、1千万円=22万8000円―の減税が見込まれる。収入が多い人ほど、減税額が増える仕組みだ。 一方、識者の中には、最低賃金の上昇幅でなく、物価上昇率を引き上げる際の基準とすべきとの意見もある。平成7年からの物価上昇率に基づき、10%にあたる10万3000円を引き上げ幅とした場合は、年収200万円の場合=1万6000円▷300万円=1万6000円▷500、600万円=2万1000円▷800万円、1千万円=3万1000円―に留まる。 ■「税収の大穴」是非は 同社の是枝俊悟主任研究員は「物価上昇などで生活費は上がっている。それに見合った見直しは必要だ」としつつ、「税収に大穴を空けることの是非は問われるべきだ」と話す。 非課税枠を178万円まで広げれば多くの減税が行われるが、一方で所得税が3兆3千億円、住民税が4兆円の計7兆3千億円の税収が減る。物価上昇率に基づき10%の引き上げにとどめた場合でも1兆1千億円の減収見込みだ。